日本相撲協会の諮問機関である横綱審議委員会(横審=矢野弘典委員長)が、大相撲秋場所千秋楽から一夜明けた28日、東京・両国国技館で定例会合を開いた(出席7委員)。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、2場所連続で中止されていたが、1月の初場所後以来、8カ月ぶりの開催となった。

関脇正代の初優勝で幕を閉じた秋場所だが、横綱は白鵬(35=宮城野)、鶴竜(35=陸奥)ともに初日から休場。83年夏場所以来、複数横綱全員が37年ぶりに初日から不在という事態に陥った。白鵬の2場所連続皆勤は3年前にさかのぼり、以降の18場所で全休5場所を含め休場は11場所。ただ、皆勤した7場所で5回優勝と万全を期して出場すれば強さを発揮している。一方の鶴竜は、3場所連続休場明けで出場した今年3月の春場所は、12勝3敗の優勝次点で復活のきざしを見せたかと思われたが、故障になき2場所連続休場。鶴竜の師匠である陸奥親方(元大関霧島)が、次に出場する時は進退をかける場所になると示唆するなど、両横綱に対する横審の反応が注目されていた。

会合後に代表取材に応じた矢野委員長は、会合で両横綱に対し「横審の内規に基づいた処分をするかどうかまでの踏み込んだ、たいへん厳しい意見が出た」とした上で「今場所は、そこまで踏み込まないことにした」と「激励」などの決議は行わないことにした。その上で「横綱の自覚を待つことに注視していこうと。第一人者としての自覚をもっと徹底してもってほしい」と奮起を促した。「過去1、2年を振り返っても断続的に休場が続いている。たいへん厳しい意見が出ました」と語った。

横審の内規では、不本意な成績や休場が続く横綱に対し、委員の3分の2以上の決議があれば「激励」「注意」「引退勧告」ができると定められている。最近では稀勢の里に「激励」が言い渡されたことがある。今回は両横綱に対し「1、2人」(同委員長)の委員から何らかの決議を出すことを検討してもいいのでは、という意見があったという。「問題意識は(委員の)共通したもので横綱は立派であってほしい。休場しても地位が守られているのは国技の象徴であるから。横綱は特別な地位であり、権利だけでなく義務も伴う。他の力士より一段と高い自己規制の基準を持つべき」と同委員長。次に出場する場所後に、その成績次第で白鵬だけ、鶴竜だけ、あるいは2人に対し、何らかの決議を下す考えを示した。それが次の11月場所なのか、その場所も休場し次に出る場所なのかについては明言を避けた。

秋場所で初優勝して大関昇進を確実にした関脇正代については「大器がようやく花を咲かせた。次の場所は3大関になる。上を目指して競って励んでほしい。以前から話しているように世代交代の時期に来ていることを強く感じている」と3大関からの横綱待望論を説いていた。さらに3人には「上(横綱)に上がる候補のには、われわれの期待を受け止めて『自分が横綱になったら』という心構えを持ってほしい。次に横綱を目指せる人は、そうたくさんはいない。強くなるだけでなく、心の準備もしておいてほしい」と期待を寄せた。