大相撲九州場所(14日初日、福岡国際センター)で、7場所ぶりに返り入幕を果たした西前頭15枚目の阿炎(27=錣山)が4日、報道陣の取材に応じ、場所にかける意気込みや、再起までの道のりを振り返った。

まず、場所に臨むにあたっての心境を「新しい気持ちで、変わった自分を見せられるような土俵だったらいい。(幕下まで)落ちた時に、そういう気持ちでやらないといけない、幕下のころから新しく踏み出そうと思っていた。幕内でも1歩1歩、踏み出していけるように頑張っていこうという気持ちだった」と語った。

日本相撲協会が定めた新型コロナウイルス感染対策ガイドラインに違反し、昨年9月の秋場所から3場所出場停止処分を受けた。関取の座を失い、番付を下げた幕下からはい上がり、2場所連続7戦全勝優勝で関取に復帰。十両も先場所の13勝2敗での優勝など、24勝6敗の2場所で通過し、幕内復帰を果たした。

復帰までの、この1年を「相撲に向き合うことだけを意識していた。前から相撲に向き合っていれば良かった、と思ったし」と反省を込めつつ「今は次の場所、次の相撲しか考えていない。過去よりも先かな、と思っている」と前向きに話した。再入幕については師匠の錣山親方(元関脇寺尾)から「普段から、基礎は大事だぞ、と言われている。自分が人として、どうあるべきかと。私生活では当たり前のことだと思うけど、しっかりルールを守ること。それを意識して動いている。(人に)見られることを意識して行動している」と、師匠の教えを胸に刻むように話す。

それを土俵で、どう表現するか-。「土俵の上では、今と昔じゃ必死さが違うと思う。昔も必死でやっていたけど、調子に乗っていたというのが、いちばん合っていると思う。それが抜けて集中していると思う」と、かつての自分との違いを話す。その上で「それを見てもらえたらいい。前は集中が散漫して気が散ってキョロキョロしたり。今は深い集中が出来ている。自分は必死に頑張るだけ」と、何度も「必死」や「集中」の言葉を使った。

頑張らなければ-。そう思わせてくれる原動力は、家族の力だ。謹慎中も今も、妻や1歳半の長女が住む自宅を離れ、部屋での生活を送っている。妻や師匠と話し合った上で、自宅での生活に戻るのは、幕内に復帰してから、と決めていた。「幕内で勝ち越して自分の中でよしっ、と思ったときに胸を張って、一緒に住めるかなと思った」と目標を掲げる。家族とは場所後に「何度か家に顔を出したりして」(阿炎)会っていた。気兼ねすることなく自宅で、普通の日常を取り戻すためにも「一番の目標」という勝ち越しを目指す。