日本相撲協会は26日、東京・両国国技館で臨時理事会を開き、師匠の湊親方(元前頭湊富士)夫人への暴力疑惑が発覚した平幕の逸ノ城(29)の件などについて協議した。この日までに逸ノ城と湊親方から事情を聴いた同協会のコンプライアンス委員会の答申を踏まえ、同協会は不問とした。

暴力について、相撲協会は「一部、事実関係を確認した」と発表。ただし「悪意の暴行ではなく、いずれも5年以上前の出来事であり、それ以後の暴行はなかった」とした。理事会後、芝田山広報部長(元横綱大乃国)が会見し、師匠夫人との確執、アルコール依存ともに「ない」と断言した。

湊部屋の実情を知る関係者によると、過去に逸ノ城は過度な飲酒によって、酒席でトラブルをたびたび起こしていた。飲食店で泥酔して部屋に連れ戻そうとした際、湊親方夫人に対してたたく、つねる、かむという行為もあったという。昨年12月ごろから部屋を出て1人暮らしを始めたが、稽古を無断で休むこともあった。そのような行為に湊親方が再三注意したが、直らなかった。

師弟間の信頼関係は破綻しており、7月の名古屋場所で初優勝した際にはすでに、まともに話し合いができる状況ではなかった。湊親方らがカウンセリングや治療を勧めても本人が一切応じず、話し合いについても「弁護士を通して話してください」と返答されていたという。今年11月の九州場所でも逸ノ城は部屋でちゃんこを食べないなど確執は続き、場所での成績は4勝11敗と振るわなかった。

ただ、同協会はこの日、新型コロナウイルス対応ガイドラインに違反したとして、逸ノ城の1場所出場停止を発表。師匠の湊親方は、監督責任として3カ月の報酬減額20%の懲戒処分とした。

逸ノ城は新型コロナウイルス感染防止策の一環として、外出禁止となっていた一昨年11月、昨年8月に無断で2度、外出したことが確認された。そのことに対する処分で、同様にガイドライン違反では当時大関の朝乃山が6場所、阿炎が3場所の出場停止処分を受けた。それと比べると軽い処分となったのは、キャバクラなどの接待を伴う飲食店ではなく、飲食店滞在が短時間だったこと、聞き取り調査で反省の態度を示したことなどが理由だという。

1場所の出場停止は、純粋にガイドライン違反によるもの。復帰する3月の春場所は、十両から出直しとなる見込みとなった。