節目を迎え、さらに“漢”(おとこ)を磨く決意を見せた。

元前頭豊響の山科親方(38)が29日、東京・両国国技館で引退相撲を行った。断髪式では約400人がはさみを入れ、師匠の境川親方(元小結両国)が止めばさみを入れてマゲに別れを告げた。

土俵上で師匠から「豊響は力士として引退しました。しかし、“漢”は辞めたわけではありません。今後ますます器量、度量を磨いて、どんどん徳を積んで良い指導者になってもらいます」と熱いエールが送られると、会場から大きな拍手と歓声が起きた。

整髪中に報道陣の取材に応じた山科親方は「自分が小さいときから父親もいないし、家でもそんなに厳しく言われたことがなかった。(師匠は)本当の父親みたいな存在でした」と振り返る。続けて「今でも怖いっす」と本音をのぞかせながらも、「小さい時に怒られた時がなかったんで、本気で怒ってくれる存在です」と感謝を惜しまなかった。

同親方にとって漢とはどんなイメージなのか-。そう尋ねられると、「僕の中では1人しかいませんね」と即答した。そして理想の親方像について「土俵の中の指導も大事だと思うんですけど、1人、1人の心とか、土俵以外のところでも寄り添う。気配りのできる親方を目指したい」と誓った。

 

◆山科隆太(やましな・りゅうた) 本名は門元隆太。1984年(昭59)11月16日、山口・下関出身。小3で相撲を始め、豊浦中を経て03年に響高を卒業。05年初場所で初土俵、07年初場所で新十両に昇進。同年名古屋場所で新入幕。最高位は08年九州場所での東前頭2枚目。十両だった18年1月に不整脈を発症して初場所を全休し、翌春場所で幕下に陥落。以降、関取復帰はかなわず21年6月に引退した。三賞は敢闘賞3個、金星1個(12年夏場所7日目、白鵬から小手投げで奪う)を獲得した。