目指すは、しこ名に負けない存在感! 大相撲の東幕下19枚目で富士市出身の富士の山(24=藤島)が、目前に迫った関取昇進の思いを強めて奮闘している。今月の夏場所は、3勝3敗で臨んだ7番相撲に勝って2場所ぶりの勝ち越し。次の名古屋場所(7月13日初日、IGアリーナ)で幕下15枚目以内に入れば、7戦全勝で新十両に昇進する。ともに前頭の翠富士、熱海富士という飛龍高の先輩、後輩に続く出世を目指す。
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執念の勝ち越しだった。夏場所14日目の7番相撲。富士の山は立ち合いから、突いて、突いて、突きまくった。十両経験者の魁勝のいなしに、落ちそうになったが、踏ん張った。体勢を立て直しては、再びのいなしに、今度は背後を取られそうになった。それでも反射神経の良さで向きなおして反撃。最後まで前に出続けて突き倒すと、その勢いに相手はひっくり返って尻もちをつき、後ろ回りに1回転しながら土俵下に落ちた。
取組後、富士の山は「自分の相撲を取れたのでよかった」と、師匠の藤島親方(元大関武双山)譲りの引かない相撲に胸を張った。3月の春場所も、3勝3敗で7番相撲に臨んだが、敗れており、2場所連続で繰り返したくない意地が猛攻に表れた。「素晴らしい、しこ名をいただいたので、名前負けしないように頑張りたい」。富士市の実家は、曇りでも雨でも「365日、見える」というほど富士山に近い。標高はもちろん、存在感も日本一でありながら、身近に感じる富士山のようになることが目標だ。
丘小4年時にわんぱく相撲に出場し、いきなり静岡県を制して全国大会に出場した。全国大会は2回戦で敗退したが「勝っていくのが楽しくて」と、そこから本格的に相撲を始めた。飛龍高では、ともに個人戦で、2年時の全国高校選抜大会で2位、3年時の全国高校総体で3位。「4年で幕内」を目標に掲げて、藤島部屋に入門した。
19年初場所の前相撲で初土俵を踏み、序ノ口デビューの翌春場所から、9場所連続で勝ち越した。初土俵から2年足らずで、関取昇進目前の西幕下11枚目まで番付を上げた。だが、それから4年半経過した今も、自己最高位は変わらない。「調子はいいけど、勝てないことが続いた」。周囲に実力者、関取経験者が居並ぶ幕下上位、中位で、思うように成績が残せない場所が続いた。「自分らしさを失っていた。『勝たないと』とばかり考えて、気持ちのバランスも崩れていた」。焦りから、前に出る、本来の相撲が影を潜めていた。
そんな胸の内を師匠に見透かされ、稽古に没頭する原点に立ち返った。1日30番ほど、内容にもこだわって稽古を重ねた。今場所は飛龍高の1学年後輩で、同部屋の天道山に番付で追い越され「刺激になった」と、尻に火がついていた。
2学年後輩の熱海富士はすでに、幕内の人気者となった。同じく幕内を長く務める先輩翠富士とともに、静岡県出身の関取といえば伊勢ケ浜部屋勢のイメージが強い。だからこそ富士の山は「静岡県出身は、伊勢ケ浜部屋だけじゃないというところを見せたい」と力説。まずは新十両昇進を勝ち取り、実力でも存在感でも、しこ名に見合う活躍を夢見ている。【高田文太】
◆富士の山優斗(ふじのやま・ゆうと)本名・鈴木優斗。2000年(平12)7月26日、静岡・富士市生まれ。丘小4年から相撲を始め、飛龍高で18年の全国高校選抜大会個人戦2位。同年の全国高校総体は個人戦3位。19年初場所で初土俵。最高位は20年九州場所の西幕下11枚目。得意は突き、押し。家族は母と弟2人、妹2人。183センチ、140キロ。

