東前頭2枚目の伯桜鵬(22=伊勢ケ浜)が、前日7日目に痛めた右腕に大量のテーピングを施して出場し、先場所優勝の前頭琴勝峰を破った。立ち合いで左を差すと、見た目こそテーピングが痛々しかった右をスムーズに動かして1枚まわしを引いた。その右上手を最後まで離さず、体の回転を利用して上手出し投げで仕留めた。3連勝で5勝3敗とし、来場所の新三役昇進に前進した。
前日20日の7日目、関脇霧島戦で右上腕を痛めた。もろ差しになり、相手に両腕をきめられながら寄り切ったが、代償は大きかった。取組直後から患部を気にしており、支度部屋ではアイシングを施し、苦痛から報道陣への対応も言葉少なだった。勝っても笑顔がないまま、右上腕を押さえながら引き揚げていた。
この日の取組後、その後の迅速な対応と劇的な回復を明かした。前日の取組後は都内の部屋に戻ると、トレーナー2人に、ほぼ付きっきりで対応してもらい、まずは患部の痛みを和らげてもらった。「取組直後の痛みが治まった」といい、この日朝に医師に診てもらった。「両肩を手術してもらった、自分の体を1番知っている、信頼している先生が『しっかりテーピングをして出れば大丈夫』と言ってくれたので、師匠に『大丈夫です』と言って、出ることにしました。土俵に上がる以上は大丈夫」と、出場を決意したからには、言い訳はしないと決めた。
ただ、痛み止め薬は服用しての出場だった。右上腕は、力こぶがいびつな形でできている。これは昨年夏場所で上腕二頭筋を断裂した影響で、伯桜鵬は「もともと切れていた」という。厳密には、前日の取組で「切れて(筋断裂して)、筋肉が落ちてきてしまった」という、体に異変が起きたための現象。伯桜鵬は続けた。「(伊勢ケ浜部屋の兄弟子で十両の)宝富士関も同じけがをしていて、アドバイスをもらいました。宝富士関はベテランになってからで、満身創痍(そうい)の中でもやっていた。尊敬する兄弟子です」。伊勢ケ浜部屋が一丸となって協力し、この日の伯桜鵬の出場が実現していた。
前日の取組後は「休場もやむなし」といった雰囲気が漂っていた。そこから一転、出場にこぎ着けたどころか、先場所優勝力士を破った。
「先生(医師)には『もしも、おかしければ場所後に調べるからおいで』と言ってもらっている。力士はみんなけがをしているし、条件は同じ。自分から攻め続ける相撲を取りたい」。4日目には先場所に続いて2場所連続で横綱大の里を破って金星。今場所で勝ち越せば殊勲賞、さらには来場所の新三役というチャンスを、みすみす棒に振りたくない思いは当然、強い。ただ、無理して力士としての寿命を縮めるようなことは避けたいと思う中で、信頼する主治医からのゴーサインが出て、もはや迷いはない。
9日目は小結高安戦が組まれた。さらに、もう1人の小結安青錦戦が終われば、三役以上との対戦を終える。この日の右上手の引きつけは、けがしているとは感じさせない、滑らかさと力強さがあった。今はただ、2桁白星を挙げて、初の三賞と新三役を勝ち取る意欲に満ちている。【高田文太】

