トム・クルーズがまたもや魅せてくれた。改造したバイク(ホンダCRF250)に乗って1200メートルの断崖から飛翔(ひしょう)、地上から150メートルのところでパラシュートを開いて着地するという離れ業だ。
「ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE」(21日公開)は、クルーズが体を張ったアクション・シーンを見せ場にしたこのシリーズの7作目だ。
メガホンは「ローグ・ネイション」(15年)以来、来年公開の「-PART TWO」まで含めると計4作、つまりシリーズの半分を担っているクリストファー・マッカリー監督だ。
クルーズ主演の「ワレキューレ」で製作と共同脚本を手がけてから16年の付き合いになるこのコンビは、ことアクションに関しては「オタク仲間」のような関係にあるらしい。
作品資料の中でクルーズが思いを明かしている。
「子どもの頃はいつも危険なことを探していました。8歳の時には、建設現場でベニヤ板を見つけ、それまでで最大級のジャンプ台を組み立てました。自転車で滑走した時に板は真っ二つに割れ、ゴミ箱に激突してそこら中血だらけになりました。何年もの間、そうやって血だらけになり、歯や骨を折りましたが、それこそがずっとやりたかったことなのです」
そんなクルーズとマッカリー監督はこの16年間、機会があればアイデアを語り合い、実現してきた。
「私たちは常に映画というものを食し、眠り、呼吸をしています。別々に、そして一緒に得たすべての知識を絶えず取り入れ、これまでやってきたことを超えることに生かそうとしてきたのです」
冒頭のダイブシーンの裏側も明かしている。
「飛び降りる際には一定の速度が必要でした。しかし斜面が狭いため、下を見れば落下してしまう。だから、バイクにスピードメーターが付けられなかった」
解決策は「とにかく、トレーニングに尽きます」とクルーズは言う。
「何度も傾斜台を走っていると、体で(空気中の)分子を感じられるようになり、エンジン音とその感触でスピードが分かるようになります。そこまでトレーニングを繰り返す必要があったのです」
ここまで「実写」にこだわるのは、クルーズのチームとあのクリストファー・ノーラン監督だけだと思うが、この両者の作品にリピーターが多いのも分かる気がする。特殊効果では表現しきれない手作り感、手触り感はやはり違うのだ。
シリーズ初の2部構成となった今作は、悪意ある者の手に渡れば全人類の脅威となる究極の兵器を巡る物語。国家機関や伝説的な武器商人が暗躍する中で、イーサン・ハント(クルーズ)と彼のチームIMFは今回も独自の「正義」を貫いていく。
アブダビ、イタリア、ノルウェーとシリーズならではの文字通り豪華なロケが敢行された。砂嵐の演出に目がくらみ、カーチェイスの破壊スケールは笑ってしまうほどだ。特に爆破された鉄橋から列車が落下するシーンには迫真力がある。バイク・ダイブと並ぶ見せ場と言っていいだろう。
おなじみと新顔の入り交じったキャストも厚い。クルーズ以外で1人挙げるなら、マーベル作品などで知られるヘイリー・アトウェルに旬の人的勢いを感じる。
2時間43分は長いどころか、パンパンの盛りだくさん。あっという間にエンディングを迎えた印象だ。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)




