プロダンスリーグ「D.LEAGUE」で熱戦を繰り広げるDリーガーの素顔に迫る連載「Dリーガーのオドリバ」第3回は、FULLCAST RAISERZのBABY TWIGGZ(27)と、Benefit one MONOLIZのRiNnA(23)の登場です。それぞれが得意とするKRUMP(クランプ)、VOGUE(ヴォーグ)の魅力についても語ってもらいました。【取材・構成=大友陽平、写真・動画=小沢裕、山崎安昭】
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-これまでのROUNDを振り返って
BABY あっという間ですね。RAISERZが結成されて、昨年の夏過ぎあたりから準備してきて…。昨年はコロナの影響もあって大きな舞台に立てなかったのもあって、いろいろとフラストレーションもたまってる状態の中で、華やかなステージに立たせてもらいました。
-ROUND.6で初勝利した
BABY 開幕戦から、エンターテインメント性を持たせたり、幅を見せてきたんですけど、なかなかうまくいかなかったところでのROUND.5で、ディレクターのTWIGGZ“JUN”さんに一緒に出てもらって、もう1回俺らの原点に戻って、クランプの男らしさを見せるパフォーマンスをしようと。優勝までは届かなかったんですけど、好感触で、やっぱりこれだよね! と。ROUND.6は順番が大トリだったので「THE KRUMP」という、最終戦に出すようなパフォーマンスを用意しました。練習中から楽しそうだねって言われたんですけども、楽しいという気持ちが出て、オーディエンスの方々の支援もあって勝てたんですけど、楽しむことが大事なんだと改めて感じました。
-これまでを振り返って
RiNnA まだROUND.6、でももうROUND.6で、いろいろな気持ちを経験して、人間としてもダンサーとしてもすごく強くなった気がします。
-ROUND.4で優勝。だんだんと調子を上げている
RiNnA ROUND.1と2で連続で最下位で本当に悔しかったのもありますし、メンバー同士もぶつかったりもしました。ROUND.4でSAYAKAさんがSPダンサーで入ってくださって、みんなのモチベーションもより上がって、本当に優勝を狙っていこうといってとれた勝利だったので、うれしかったです。
-転機があった
RiNnA ROUND.2の練習の時もみんな気持ちが複雑で、多分1人1人どういう風に頑張っていけばいいのか分からなくて、会話も少なかったし、泣きながら踊ったりとか…。私も個人的には一番泣いてた時期で、情緒不安定でした。でも1回みんなでめちゃ泣いて、HALさんにカツを入れてもらって、ROUND.3で最下位を脱出したので、そこから楽しくできています。今は、ROUND.1とか2の時のことが全然信じられないくらい、めちゃみんな一致団結して、今は楽しく練習してます。
-ダンスを始めたきっかけは
RiNnA 幼稚園の時の友達がダンスをやっていて、その影響で地元のダンススクールに通うことになりました。その時やっていたのは、ジャズダンスとか、ガールズヒップホップでした。13歳の時に、ダンススクールの友達が別のスタジオで習い始めて紹介されて行ったら、そこに(現在ディレクターの)HALさんがいて。そこから本格的にダンスを始めました。
-VOGUE(ヴォーグ)に出会ったのは
リンナ 高2の時に出会いました。HALさんが毎年主催していた大会でヴォーグのバトルをやるコーナーが最後にあって、そのバトルを見て、私が習っていた先生がそこに入っていたので、習ってみようかなって言ったのがきっかけです。
-ヴォーグにはまっていった魅力とは?
RiNnA もともと体が柔らかいんですけど、その柔らかさをいかせるジャンルがヴォーグだったので、自分に向いてるのかな? と思って今も続けています。
-ヴォーグとはどんなダンスですか?
RiNnA ヴォーグの中でもいろいろなジャンルに分かれていて、オールドウェイ、ニューウェイ、ヴォーグフェム、ランウェイ、フェイスという感じで分かれています。本当に歴史がめちゃくちゃ深くて、ジャンルも分かれるので、他のダンスとも違うのかなと思います。私が主にやっているのはニューウェイと、ヴォーグフェムというジャンルです。元々はニューヨークのゲイの方が、どれだけ女性に近づけるか、どういう動きをしたら女性に見えるかという動きをやったのが「ヴォーグフェム」です。私は海外のバトルとかでは、ニューウェイにも出ていました。
-体はどれくらい柔らかい?
RiNnA 自分ではそこまで柔らかいと思わないんですけど、周りからは結構言われるので…。
BABY タコみたいですよね! 軟体ムーブしているときも、タコみたい。床でもすごい。ウォーってなります(笑い)
RiNnA 肩を抜くというのも、ヴォーグの技にはあります。MONOLIZのメンバーもみんなトレーニングしています。
-どんなトレーニングを?
RiNnA みんなは私が普段やっているストレッチをやったりしています。元々レッスンで教えていたストレッチをやってみたら、みんな悲鳴をあげてたりきつかったみたいで…。でも体が柔らかくなったと聞いています。
-もともと柔らかい?
RiNnA ヴォーグを始めるまでは自分でも分からなかったんですけど、小4の時に、タオルを持って肩を後ろにやる遊びをしていたら、お母さんから「気持ち悪い!」って病院に連れて行かれたんです(笑い)。先生にも、骨がゆがんでしまうからやめましょうねと言われて、それからはやっていなかったんです。そうしたら、ヴォーグのレッスンに行った時に「肩を外す練習をします」という時間があって「懐かしい! できる!」って(笑い)。先生に「何でできるの?」って驚かれましたが、私は運命を感じました!
-ニューヨークに留学
RiNnA 大きいヴォーグのバトルがニューヨークで毎年あるんですけど、それに出るついでに、3カ月くらいそのままレッスンを受けたりとかしてました。「BALL」と呼ばれるバトルの大会に初めて出た時に、小さい大会でしたけど優勝できて、本場のBALLでも自分のヴォーグが認められたのかなって思って、そこからいろんな国のBALLに出るようになりました。日本ではまだ主流ではなくて、バトルもあまりないので、韓国とか台湾、香港、マカオとかに行って、バトラーとしての成績を残したいと思って、1人で行ってました。
-ダンスを始めたきっかけは?
BABY 小3の時に、姉がダンスをやっていて、発表会を見に行ったんです。サッカーをやっていて、最初はやらないって言ってたんですけど、その1年後にまた姉の発表会を見に行ったときに、“くらっちゃった”んですよね。表舞台に立つのが好きで、昔から目立ちたがり屋でもあったので、そこからダンスを始めました。ちょうど小5、6ぐらいの時に、当時やっていたダンス番組を見た時に、クランプを知って、なんだこのダンスって思って。ただガツガツ踊ってるだけみたいな感じなんですけど、男だからか「かっけー!」って思ったんです。それからテレビの前で見よう見まねでやっていて、ちゃんと習い始めたのが中2の時です。最初はカリスマカンタローさん(Dリーグ神田勘太朗COO)のレッスンを習っていて、そこでJUNさんも所属している「®AG POUND」というチームも知って、レッスンに通い始めました。
-クランプとは?
BABY 「パワフルで、エネルギッシュで、アグレッシブ」なダンスというのが分かりやすい表現なのかなと思います。いろいろ動きの根源みたいなものはあるんですけど、決まったような動きは基本はなくて、自分の怒りとか、魂からの叫びをパワーで表現するようなダンスです。ストンプと、胸を打つようなチェストポンプと、スイングという腕を激しく振るという3つしか決まった動きはないので、これをいかに自己流でつなげていったり、表現していくか、それをパワーとして乗せていくか…最後は動けなくなるぐらい、出しきれるかというダンスです。
-普段のトレーニングは?
BABY 去年RAISERZが結成されてからはパーソナルトレーナーをお願いして、ガッツリやっています。週1でトレーナーに教えてもらったり、食事制限のことも聞いたり。3グループくらいに分かれて筋トレしています。それで、(練習の)スタジオに着いたら、みんなで筋肉を確認し合うというのが、ルーティンになっています(笑い)。
-同じダンスでも全く違いますね。クランプの印象は?
RiNnA クランプは、私も今まで触れてこなかったダンスで知りませんでした。Dリーグという場で、クランプのチームがあると聞いて、開幕戦の時にも隣だったんですけど…めちゃ怖くて…。
BABY (笑い)
RiNnA でも本当にかっこいいです! 皆さんすてきです。ヴォーグたいに歴史が深いことも知って。私もやってみたいです!(笑い)
BABY 多分、それは無理です!(笑い)。筋肉がついて、肩が抜けなくなっちゃいます(笑い)。
-ヴォーグの印象は?
BABY 自分の興味あるダンスしかやってこなかったんです。ヴォーグの存在は知っていましたが、手や指先とかで形で見せていくという部分はクランプに似ているなと思いながら、でも正反対のダンスで、こんなジャンルがあるんだと思いました。まね事でしたこともあるんですけど、すごく楽しくなっちゃうんですよね。見せることが好きなので、形もおもしろくて参考にしている部分はありました。
-ともにバトル文化ですね?
RiNnA そうですね!
BABY 確かに! ヴォーグはニューヨークで、クランプはロサンゼルスが発祥ですし、力と美と…すごくおもしろいですね!
-ROUND.7から後半戦に突入する。今後のチームの目標は?
BABY 目標としては優勝しかありません! 僕ら的には、これがDリーグだ! Dリーガーだ! というチームになりたいので、ある意味硬派というか、熱意を持って、おとこ気を出しまくって、優勝して、これが王道のチームだぞ! と言われるようなチームを目指して、初代チャンピオンになりたいと思ってます。
RiNnA HALさんも言っているように折れずに、こびずに、負けずに、MONOLIZを貫き通すというのが目標です。もちろん優勝もしたいので、美しく頑張りたいと思います。私の目標としてはヴォーグをたくさんの方に知っていただきたいなというのがあるので、Dリーガーを目指してもらえるように、その中でもMONOLIZを目指してもらえるように、私を目指してもらえるように、そういう存在になりたいです。
-個人の目標は?
RiNnA ヴォーグの知名度はまだまだなので、バトラーとして、いろいろな国のバトルに参加して成績を残していきたいです。ニューヨークで「LATEX BALL」という大きな大会があるんですけど、毎年挑戦していて、今年もコロナが落ち着いて、開催されれば行って、挑戦したいです!
BABY クランプの人口も少なくて、小中学生あたりでクランプを始める子も少ないので、次世代をどんどん増やしていって、日本のクランプシーンをもっともっと大きくしていきたいです。僕個人としては、クランプといえばBABY TWIGGZだよねって、日本では5本の指に入れるように頑張りたいです。
-クランプを小中学生に広めるための課題は?
BABY 見てカッコいいと感じてくれる人もいると思うんですけど、踊ってみたいと思われにくいのかなとも思うんです。ダンスバトルでぶつかり合ったり、決まった形もないので、まねしやすくもないのかなと。でもそれをRAISERZで形を作って、見よう見まねでできるくらい、ポピュラーな感じに見せていくようにするのが大事なのかなと思います。頑張ります!
◆BABY TWIGGZ(ベイビー ツイッグス)1993年(平5)9月1日、東京都生まれ。小3の頃に姉の影響でダンスを始め、小6でKRUMPと出会う。「Twiggz Fam」や「®AG POUND」の一員として活躍し、17年には世界大会でも優勝。アーティストのサポートダンサーを務めるなど活躍の幅を広げる。
◆RiNnA(リンナ)1997年(平9)7月11日、大阪府生まれ。6歳からダンスを始め、17歳でVOGUEに出会い、18歳からVOGUEバトルの「BALL」にも出場。ニューヨーク留学中に「Vogue Knight」で2度優勝。国内をはじめ、台湾や香港、中国などアジア各国のBALLシーンに挑戦し続けている。
▼ROUND.6(3月22日)ハイライト 開幕以来、初めて有観客で開催された。KRUMPを武器とするFULLCAST RAISERZが、KRUMPの歴史をたどるようなパワフルなパフォーマンスで、オーディエンス票(視聴者票)を2戦連続で20点満点を獲得し、初勝利。総合順位でも首位のavex ROYALBRATSに勝ち点3差の2位に浮上した。
後半戦の開幕となる、6日開催のROUND.7からは、ジャッジが4人から8人に変更される。ゲスト審査員は、上地雄輔、ゆりやんレトリィバァらが務め、ゲストアーティストにはMABUが登場する。