地震から3年の熊本を舞台に、今風のひねりを加えた異色の青春映画である。

震災でハンドボール部をやめたマサオは何事にも無気力で、高校卒業を目前に進路が決められない。だが、震災直後のジャンプシュートの写真をSNSに投稿したことで状況は一変する。直近の写真と誤解した全国のユーザーから応援コメントが殺到したのだ。

気をよくしたマサオは、友人とともに「頑張るふり」をした写真を連続投稿。反響は広がり、とうとう男子ハンド部の再建とインターハイへの出場も決まってしまうが…。

倒壊した住居から運んだ家具が不釣り合いに置かれた仮設住宅…中途半端な状況でも、そこには途切れなく生活があり、「頑張るふり」も夢中になれば、何かが生まれる。無気力な日常からいきなりドラマチックな展開は、「私たちのハァハァ」などの松居大悟監督の得意技で、そこに現代を象徴する災害、SNSが巧みに絡められる。

マサオ役に加藤清史郎、友人の1人に鈴木福とかつての名子役が出演。監督は彼らに染みついた方法論を壊したそうで、アカの取れた演技がオーディション組と違和感なく新鮮だ。【相原斎】(このコラムの更新は毎週日曜日です)