1つの無線機が現在と過去の刑事をつなぎ、神経ガスを使ったかつてのテロ事件に端を発した未解決事件に挑む。現在を生きる三枝刑事を坂口健太郎が、過去を生きる大山刑事を北村一輝が演じた。

無線機で時空を超えて交信、という荒唐無稽でファンタジックな要素がベースだが、ありえない! というツッコミなく、自然に物語に入っていける。設定的に大仰になりがちなところ、俳優たちがぐっと抑えた演技をしているのが大きい。

交信する2人の刑事が、冷静で思慮深いのがいい。トレードマークの笑顔を封印した坂口、ストレートな熱を静かに表現する北村。加えて吉瀬美智子。今はバリバリ刑事、でも思いを寄せていた大山と交信する時の表情や声の変化。俳優陣の繊細な演技が見られる。

作品全体は、劇場版ならではのスケール感。坂口の壮絶なアクションシーンは必見。真っ赤な血と、本当に血の気が引いているように見える坂口の青白さ、青みがかった画面。主人公が抱えるやるせなさと相まって、美しかった。

ドラマ続編だが、映画から入っても存分に楽しめる。【小林千穂】

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