33歳にして初主演のノルウェー女優、レナーテ・レインスヴェが演じる日常が妙に刺激的だ。「人生は冒険だ」と、CMコピーのような言葉が頭に浮かんだ。

アート系の才能に恵まれたユリヤ(レインスヴェ)だが、30歳を前にこれといった道が見つけられない。年上の恋人で、作家のアクセルは結婚を望むが、妻や母親になる踏ん切りがつかない。そんな時、気さくなアイヴィンと出会い、経験のない解放感を覚えて…。

うらやましいほど正直に行動するユリヤだが、その結果は「現実」として彼女にのしかかる。30歳前後の女性の選択は、かくもスリリングなのかと波乱含みの日常描写に引き込まれる。「母の残像」や「テルマ」で知られるヨアキム・トリアー監督がレインスヴェの表情を多彩に引き出す。

アイヴィンとのデートに向かうユリヤの速足にはこちらまでウキウキする。往年のハリウッド・ミュージカルを思わせる、やや大げさなカメラワークも不思議になじむ。トリアー監督が撮るオスロはスコセッシ監督のニューヨークのように安心のホーム感がある。

さらりと、しかも爽快な後味は佳作「フランシス・ハ」(14年)に似ている。【相原斎】

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