村上春樹氏の00年の短編連作「神の子どもたちはみな踊る」(新潮文庫)の6編のうち4編を実写化し、今年4月にNHKで放送されたドラマを再構築した。阪神・淡路大震災が発生した95年、東日本大震災が発生した11年、同震災から時間が経過した20年、25年と4つの時代が描かれる。
阪神・淡路大震災のニュースを何時間も見ていた妻に出て行かれ北海道・釧路を旅する男。父との関係が悪化、家出して移り住んだ浜辺で、たき火をする男性と出会い、神戸で16年前に家族を亡くしたと聞かされる女性。東日本大震災の被災地・東北に行くことを拒絶した際、神様の子どもだからと促す母に信仰を捨てると言い放つ男性。95年以降の30年の中で心に欠損を抱えた人が次々、登場する。
震災で直接的な被害をこうむった人は、堤真一が演じる子どもを亡くした男性くらいしかいない。ただ、住む土地、時代が違い直接的に関わらなくても、それぞれが多かれ少なかれ影響を受けている。大きな震災は自分事にならざるを得ないことを示唆する物語は、観客にとって自分の物語にもなり得るだろう。
ファンタジックな物語で、頭を使わなければいけない部分も少なからずある。そうした難しさを吹き飛ばすのが、巨大なかえるくんと遭遇し、30年前のように一緒に東京を大地震から救おうと依頼される、25年の地下駐車場の警備員を演じる、佐藤浩市の姿だ。荒唐無稽すぎるシチュエーションの中、真剣に向き合い、悩み、生きる警備員…あまりにシュールで、思わず笑ってしまう。このシーンだけでも見る価値はある。【村上幸将】
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