シンガー・ソングライター南こうせつ(73)が5日、東京・日比谷野外音楽堂で「南こうせつ グリーンパラダイス」を開催した。

今公演は今年で30回目となり「野音には自由がある」と感慨深げで、杉田二郎(75)や森山良子(74)も駆けつけ会場を盛り上げた。

こうせつは、代表曲で、昨秋に亡くなった喜多條忠さんが作詞した「神田川」や「マキシーのために」をはじめ、「夢一夜」「あの人への手紙」など、アンコールを含めて全15曲を熱唱した。

アーティスト仲間から、「雨男」と言われ続けてきたが、この日は青空に恵まれた。コロナ禍で、2年続いた規制も解除されたこともあって、この日の会場は定員の3000人で満席となった。

こうせつは「昨年はコロナ禍だったが、実は感染拡大がやや一段落して、都からも開催に向けてゴーサインが出ていたのですが、その開催日だけ台風が直撃してしまい中止となってしまった。悔しかったですね」。さらに「日比谷野音というのは、僕らにとっては特別な場所なんですよ。と言うよりフォーク、ロックの殿堂だったんです。ここから歌で世の中を変えていこうという意気込みがあった。ホールとは違った自由な場所だったんです。そこで、このイベントが30回を迎えられたことは、僕にとっても大きな誇り」と感慨深げだった。

それでも、ロシアによるウクライナ軍事侵攻には心を痛める。

「理由はどうであれ、暴力で訴えるのは絶対に許してはならない」とした上で「我々は第2次世界大戦を体験し、広島と長崎に投下された原爆で、平和になろう、と決意したはず」と訴えた。

こうせつは、86年から広島の世界平和記念聖堂で「平和祈念コンサート」を毎年8月6日に開催しており、音楽業界では“平和コンサート”のレジェンドだ。そのコンサートは09年まで続けられ、コンサートの収益金は、広島原爆養護ホーム「倉掛のぞみ園」建設へと結びついた。

完成後は毎年訪問し「コロナ感染防止で今は行けないのですが、行くと顔なじみの人も多い」と話す。

「何事もアピールしなければ平和の道につながらない」と力説し、「日本は、この七十数年、素晴らしいことに戦争とか紛争とは無縁だった。だけど、それを当たり前だと思ってしまったらダメなのかもしれない。戦争は嫌だな、核兵器が無くなればいいな、そう思ってくれるだけでいい。思いは必ず共感を呼ぶ。そして自分なりの一歩を踏み出すのだと思っている」と訴えた。

そんな思いもあり、ゲストで駆けつけた杉田が「戦争を知らない子供たち」「祈り」を熱唱し、森山も「涙そうそう」「今」などを熱唱した。

「昨夜は、この歌を歌えると言うことで眠らなかった」と言う杉田は「1分でも1秒でも早く、この戦争が終わることを願って歌った。次の世代の子供たちが、真の意味で戦争を知らない子供たちになって欲しい」と話した。