アクションにこだわり、「顔面凶器」のキャラを貫いている俳優の小沢仁志(60)が来年デビュー40周年の節目を迎える。
記念映画「BAD CITY」の公開を前に先日インタビューする機会があった。「この歳になっても、こんなことができるというところを見せたかった」と自ら脚本を書き下ろした作品は、スタントマンをいっさい使わず、生身の60歳が体を張った。
「俺たちがちょっと痛い思いをして、それで観客が息をのんでくれるなら本望だよ」という作品は確かにパンチの傷みが伝わるようなリアリティーがある。
アクションへのこだわり以外にも、さまざまなエピソードを披露してくれたが、小沢の「本気」を端的に象徴すると思ったのが、実録映画で「4代目」を演じたときの話だ。1カ月で35キロの増量を果たしたというのだ。
当時、実際の4代目は服役中。出演が決まった直後、プロデューサーに都内ホテルのカフェに呼ばれ、武闘派で知られたナンバー2の若頭に紹介された。かっぷくのいい4代目とはまったく違う小沢の外見に若頭は激高したという。
「こんなんがウチのアニキできるわけないやろ、ボケ!」
カフェ内に響き渡る怒声だった。それが小沢の心に火を付けた。
「俺、役者なんで。役者を見くびんないでください。1カ月後きっちりしますから。じゃっ」と席を立ったという。
それからは朝からビールとカツ丼…5食。吐いて、また食べる。本人が「相撲取りのような」という食生活を続けた。鏡という鏡に4代目の写真を貼った。
そして、忘れられない姫路ロケ。小沢は身も心も「4代目」となって参加した。撮影は実際に4代目が通ったクラブで行われた。当の4代目をよく知るママもいる。ロケバスの中でメークと衣装を整えて店内に入ったその姿を見て、そのママが思わず「おかえりなさい…」とつぶやいた。小沢は「あの瞬間、イケると思ったね」と振り返る。
店内には若頭と数人の組員が見学に来ていた。すでに「4代目」に入っている小沢は、若頭に向かってその愛称で「おう! ○○○」と呼び掛けた。周囲の組員にすさまじい緊張感が走った。一拍おいて、あの若頭がこわもてを緩め、「アニキ! こっちです」と手招きしたのだ。小沢は「勝った!」と思った。
「ま、初対面のアレ(若頭の怒声)がなくても、(肉体改造は)やったけどね。やっぱりオレは役者だから。人生で最初で最後だよ、首の後ろんところにコブまでできたからね」
この映画には歌手の内田あかりも出演していた。小沢を見ると「先生、対談ではお世話になりました。ありがとうございました」と頭を下げた。年上の大先輩から、突然ていねいにあいさつされて驚く小沢の顔をまじまじと見た内田は「あらっ」と口に手を当てた。「作家の安部譲二さんと勘違いしたんだよ。人によってはそんな風にも見えたんだな。ま、『別人』になったことは間違いないけど」と苦笑いした。
かように役作りにいちずな小沢だが、「この先の目標」を聞いたときの答えは意外だった。
「考古学者になりたいと思っているから。はけを使う地味なのはダメだけど、トレジャー・ハンターみたいなイメージかな。バミューダ・トライアングルとか、実は調べ続けているんだよね。この歳で一からというのは無理があるから、とっかかりで、どこかのテレビで現地の探索するような仕事が来ないかなあ。(近くのスタッフに)あの番組はダメ? ああそうか。女の子じゃないとダメか…」
どうやら「現実的な第1歩」を真剣に考えている節がある。「インディー・ジョーンズ」のようなイメージも頭に浮かぶ。人一倍の好奇心、めげない心、執着心…確かに適性はある。アクティブな小沢ハンター、テレビで見るのもそう遠くないかも知れない。【相原斎】



