脚本家の山田太一さんが老衰のため亡くなった。89歳だった。日本を代表する脚本家、シナリオライターで、俳優やスタッフを飛躍に導いた。
NHKの山田太一シリーズ「男たちの旅路」(76年~82年)は、今春の再放送も含め、何度も見た。ガードマンの仕事が舞台。第1部~第4部(各3話)とスペシャルを含め、13話放送された。
特攻機の整備士として戦争を体験した吉岡司令補(鶴田浩二)と、戦後生まれの若いガードマンとの対立や信頼、愛憎などを通し、社会や人間関係の問題点を描いた。
13話すべてが名作だった。第3部(77年)で放送された「シルバー・シート」には、志村喬、笠智衆、加藤嘉、藤原釜足、殿山泰司の名優がそろって出演。老人として扱われる人々の心理を描き、同年度の芸術祭大賞を受賞している。
鶴田演じる吉岡警部補とぶつかり合う部下を、森田健作、水谷豊、柴俊夫、桃井かおりらが演じた。特に水谷と桃井は、この番組後に大ブレークした。
水谷は日本テレビ系「傷だらけの天使」(74年10月~75年3月)で、萩原健一とのコンビで、型破りでコミカルな探偵を演じ、注目された。その翌年から「男たちの旅路」に出演。78年に同系「熱中時代」シリーズに出演して、視聴率の取れる俳優として大ブレークしていく。
桃井は75年に、倉本聰脚本、萩原健一主演の日本テレビ系「前略おふくろ様」(75年10月~76年4月)に出演。元ホステスのトラブルメーカー役を演じ、人気に火が付いた。この番組と並行して「男たちの旅路」に出演。そして77年の映画「幸福の黄色いハンカチ」(山田洋次監督)で、日本アカデミー賞など多くの助演賞を獲得するなど、名俳優に駆け上がっていった。
ロックバンドのゴダイゴも、「男たちの旅路」の音楽を担当して、メジャーバンドへの足掛かりをつかんだ。ゴダイゴは同番組が始まった76年にアルバム「GODIGO」でデビューした。同番組の第3部の「墓場の島」(77年)には、人気バンド役として出演もした。そして、翌78年に日本テレビ系「西遊記」で、オープニング曲「モンキー・マジック」とエンディングテーマ曲「ガンダーラ」を担当し一躍、人気グループとなっていった。
「男たちの旅路」は内容の高評価だけでなく、出演者やスタッフも成長する契機となった番組だった。
ちなみに鶴田浩二の遺作は、山田太一さんのNHKのドラマ人間模様「シャツの店」(86年)だった。頑固な洋裁店主を演じた。
日本の放送文化の大きな損失である。【笹森文彦】
※山田太一さん以外の敬称は略しました。



