津軽弁の爆笑トークで知られる“元祖・方言タレント”の伊奈かっぺい(78)は普段故郷の青森を中心に活動しているが、3月8日に東京・有楽町のよみうりホールで、ライフワークにしている年に1度のトークライブを開催する。このほどインタビューに応じ、10代で両親の死と向き合ったことで「楽しいこと以外はしない」と心に決めたことを明かした。3回連載の最終回。
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かっぺいはネタで大事にしていることについて「他人をコケにしない」「陰湿な悪口は言わない」ことを徹底している。
「生きていて、悲しいことや苦しいことは向こうから来る。だから、自分が何かをやる時は楽しいこと以外はやらないと子どものころに決めていました。13歳で母親が死んで18歳でおやじが死んでいます。そこから後は楽しいこと以外はやらないし書かない。そう決めました」。逆境にあって下を向くのではなく、前を向いて生きるプラスのエネルギーに変える。「よかったよ~、早めに父親と母親が死んでくれてという考え方に変えていくということですよね。そのほうが絶対に面白いはずだから」。
津軽弁で意思の強い人、強情っぱりのことを「じょっぱり」と呼ぶ。かっぺいはまさに“プラス思考に徹したじょっぱり”だ。中1の時に足の病気で半年間入院。その後は高校まで、体育授業などの運動を禁止された。
「退院をして学校に行っても体育をするのは一切ダメ。いつも体育館の隅で座って見ているだけだった。運動が全くできないわけです。だから自分で嫌いだと思うようにした。運動ができないんじゃなくて『やらないんだ』と。そう自分で決めたんです」
強い意志を示した後で、しっかりとオチも付ける。「だから友達が選挙に出ても一切お手伝いはしません。運動が嫌いだから。選挙の運動も参加したくないんです」。つらい体験さえも笑いに変えるのが“かっぺい流”だ。
74年に初の方言詩集「消ゴムでかいた落書き」を発表。その後に全国的な人気者になっても青森放送社員のままだった。07年に定年退職をするまで“サラリーマンとタレント”の二足のわらじを履き続けた。
「25日が給料日だから安心して遊んでこられたんです。もし給料がなかったら、歌手ならヒット曲がなければいけないし、小説家だったら芥川賞や直木賞をとらなきゃ食っていけないだろうから。私はあくまでもサラリーマンの趣味でしゃべって書いているだけ。別にウケなくてもいい。その気楽さがあったから、やってこられたんじゃないかなと今でも思っています。私は芸人でもないし芸能人でもないんです」
肩の力を抜いて、少し毒気のある温かい津軽弁トークに耳を傾けるのが、かっぺいのトークショーだ。「楽しみながら半分遊びながら」をモットーに歩んで半世紀以上。これからも独自の道を進み続ける。(おわり)
【松本久】
◆伊奈(いな)かっぺい 本名佐藤元伸。1947年(昭22)4月16日、青森県弘前市生まれ。青森短大卒。68年に青森放送に入社。74年に方言詩集「消ゴムでかいた落書き」を発表し、77年にレコード発売。24年にアルバム全37作を世界配信した。07年に定年退職し、現在は青森放送のラジオ「伊奈かっぺい 旅の空うわの空」、「伊奈かっぺい ことわざのわざ」のパーソナリティー。ほかに詩人、イラストレーターなどマルチタレントとして活躍。



