阪神藤川球児投手が今季、日米通算250セーブを射程圏にとらえている。金字塔まで残り7セーブ。4勝1敗16セーブ23ホールドでAクラス入りを支えた昨季を振り返れば、十分に期待できる。藤川こそ、剛腕で元阪急の山口高志さん(69)を仰天させた投手の1人だ。

阪神でコーチからスカウトに転身した05年、自宅の居間で寝転がり、阪神戦をテレビ観戦していた。「1球見た瞬間、起き上がりました」。センターからの映像は、スピンのきいた直球が捕手のミットに吸い込まれていく様を伝えていた。前年までブルペンで指導していた教え子の才能が花開く瞬間を見てとった。

山口さんが目をむいたもう1人の投手は、レジェンド江夏豊氏だ。「ベンチからピッチングを見た時に、わあ、すごい投手やなと思いました。結構速かったと思いますが、速さじゃない。(マウンドとホームベースまでの)18・44がすごく短く見えた。ボールが手から離れてキャッチャーに行くまでの間が。まさに糸を引くようなボールがすっと。長い野球人生で、この2つは強烈なイメージとして残っています」。今なお色あせない衝撃を明かした。

◆山口高志(やまぐち・たかし)1950年(昭25)5月15日、兵庫県神戸市生まれ。市神港で甲子園に出場し、関大では4年春の全日本大学選手権、秋の明治神宮野球大会で優勝。松下電器(現パナソニック)から74年ドラフト1位で阪急入り。75年は12勝13敗で新人王、広島との日本シリーズでもMVPを獲得した。78年に最優秀救援投手賞。82年に引退。通算50勝43敗44セーブ。阪急、オリックス、阪神の1、2軍投手コーチやオリックス、阪神のスカウトを歴任。16年から関大を指導している。