悪人ばかりを狙い、決して痕跡を残さない孤高の強盗犯、そして組織防衛と自己保身ばかりの組織に抗う一匹おおかみの刑事ーキャラの立った登場人物がヒリつく心理戦を繰り広げる。「クライム101」(13日公開)は、アル・パチーノとロバート・デ・ニーロが熱く闘った「ヒート」のような、往年の傑作犯罪映画をほうふつとさせる。

西海岸を走るハイウエー101沿いで、高額の宝石強奪事件が多発する。デーヴィス(クリム・ヘムズワース)の完全犯罪だ。序盤にその手口を紹介するような強奪シーンがあり、決して人を殺さない緻密な犯行に手に汗握る。火を吹かない銃口に、大掛かりな銃撃戦以上の緊迫感が漂う。

路上生活から知力ではい上がったデーヴィスは、里親には優しく接し、女性関係には純なところがある。例えは古いが、任侠(にんきょう)映画の健さんのようにばりばりに感情移入できるキャラクターだ。

ロス市警の刑事ルー(マーク・ラファロ)は、デーヴィスの犯行の法則性を見抜き、同一犯と主張するが、上司は「警察が間抜けに見える」と一蹴。あげくは彼を休職に追い込んでしまう。刑事コロンボのような風体で、こちらも憎めないキャラだ。

この好感度対決が作品の軸だが、ここに二人の女性が絡む。

保険会社に勤めるシャロン(ハル・ベリー)は仕事一筋で独身を貫いているが、彼女の能力をいいように使ってきた上司に昇進を阻まれ、「君の数字は53だ」と年齢的な限界を突きつけられる。実際には59歳のハル・ベリーが魅力的過ぎて、加齢限界は見えにくいが、上司が差別主義者で嫌なヤツということは分かる。そんな立ち位置をデーヴィスに調べ上げられ、シャロンは犯行の協力者となっていく。が、あることをきっかけに顔見知りのルーにすべてを打ち明ける。

一方のデーヴィスは、ひょんなことで知り合った純朴な女性マヤ(モニカ・バルバロ)に心引かれ、引退して堅気になることを考えるようになる。

4人のメインキャストはどれも共感できるが、ここにとんでもない悪役が絡んでくる。強盗犯の元締め的存在で、かつてはデーヴィスのボスでもあったマネー(ニック・ノルティ)と、その手下でデーヴィスがつかんだ情報を入手してお宝を横取りしようとするオーマン(バリー・コーガン)だ。

「エターナルズ」(21年)に強めの印象を残したコーガンがオフロードバイクを操る暴力的なキャラを好演。外見からは想像しにくい冷酷非道な敵役として、デーヴィス対ルーの男前対決をかき回す。

そして、デーヴィスが引退を賭けた「最後のヤマ」の行方は? メインの4人には何とか切り抜けてもらいたい、というこちらの思いを乗せ、緊迫の攻防が繰り広げられる。2時間20分はあっという間だ。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)