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クラファン1億円超が証明した鹿島のベンチャー文化

鹿島アントラーズが鹿嶋市と実施したふるさと納税型のクラウドファンディングは、目標を超える1億2889万円の支援金を集めた。昨季の入場料収入の約13%に相当する金額だ。新型コロナウイルスの影響を受けたクラブにとって、これほどありがたい収入はない。このプロジェクトを担当した鹿島アントラーズ経営戦略チームの齊藤友紀さんは「どんな反応があるか見えずおっかなびっくり始めたが2日くらいで目標の50%ほどの金額が集まった。感謝の気持ちでいっぱい」と話す。

カシマスタジアム
カシマスタジアム

応援したい自治体に寄付ができる「ふるさと納税」を活用したことも、寄付金が集まった大きな要因だろう。鹿嶋市の協力のもと、支援者は控除限度額の範囲内で寄付を行えば、自己負担2000円でクラブを支援することができた。本来鹿嶋市に入るお金がクラブに渡った形だが、市役所内で反対意見は出ず、苦情も一切なかったという。地域とクラブがJ発足前から築いてきた深い関係性があって、実現したものだった。

プロジェクトを担当した齊藤さんは、さまざまな職歴を経て鹿島にたどり着いた。東北大時代は文化人類学者を目指して2年ほどイランに滞在。しかし帰国後は実践的な学びを求めて慶大の法科大学院に通い、弁護士になった。自身で4年ほど事務所を構えたが、個人から社会へと課題解決の興味が移り、アメリカで公共政策を、オランダで経済学を学んだ。再び帰国後はAI技術の研究開発を行う会社に入り、経産省の有識者会議などにも出席したという。その後は「他では味わえないゴタゴタを経験したい」と、上場直後で慌ただしいメルカリに移り、メルカリが鹿島を買収してからは、クラブに出向している。

畑違いの世界で仕事をしてきた齊藤さんだからこそ、今回のクラウドファンディングのように「スポーツビジネスの常識に染まらず、新しい企画を立てられる」という。例えば今年2月に鹿嶋市、メルカリと結んだ包括連携協定も、当たり前だった地域との連携を“協定”という形あるものにすることで、活動の幅が広がっていく可能性を見越したものだという。当然のように行ってきたことの価値を再発見したり、形を整えたり、外に発信するといった作業は、クラブを外から見てきた人だからこそ、できることでもある。

齊藤さんにとって鹿島は「ベンチャーのような文化を持つ組織」だ。ホームタウン5市の人口は合わせて27万人ほどでしかない。「他のクラブに先んじて新しいことを仕掛け、地域的な制約をクリアしないと、あっという間に置いていかれる可能性がある」。この地で常勝軍団を維持するのは、簡単ではない。メルカリ傘下で次々と新しいプロジェクトを実施しているように見えるが、これも「余裕があるから」ではなく「常に課題解決と勝利へのプレッシャーに追われているから」。そんな鹿島での日々に、齊藤さんはやりがいを感じているという。

クラブの取り組みを掘り下げると、背景や支える人たちの努力、またクラブの課題も見えてきた。同時に、鹿島というクラブが常に強くあることの難しさ、それを維持してきた先人たちの偉大さを思い知った。【杉山理紗】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「WeLoveSports」)

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