【オークビル(カナダ)12日(日本時間13日)=佐々木隆史】五輪2連覇の羽生結弦(24=ANA)が、4回転半習得のために2種類の5回転ジャンプを跳んでいることを明かした。ハーネス(体をつりあげる補助器具)を使用した上での5回転ジャンプだが、本人は好感触。今季中にも、誰も試合で跳んだことがない4回転半をプログラムに組み込む姿勢を見せた。女子SPは紀平梨花(17=関大KFSC)がトリプルアクセル(3回転半)を着氷するなど、78・18点を記録して首位発進した。

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公式練習後に行われた囲み取材で、羽生から仰天発言が飛び出した。オフに左足首を捻挫した理由を問われた時だった。「5回転サルコーの練習をして、足が引っかかった」とさらりと言った。ざわつく報道陣を横目に「クワッドアクセル(4回転半)を練習するためにもっと回転力を上げたいと思っていて」と、柔軟な発想で5回転ジャンプを跳んでいることを明かした。ハーネスを着けて、サルコーとトーループの2種類の5回転ジャンプで練習しているという。

2位に終わった昨季の世界選手権後に、将来的に全種類の4回転ジャンプ習得に意欲を見せていた。その瞬間が迫ってきたと思わせる光景が、この日の公式練習でかいま見えた。4回転ジャンプはループ、トーループ、サルコー、ルッツを着氷させるなど、好調な様子。そして練習終了間際に、何かを確かめるかのように2回転半を2度跳んだ後、ジャンプ担当のジスラン・コーチに4回転半挑戦を直訴。同コーチによると「『今日は本当に調子がいいから』って。でもやめた方がいいって言ったんだ。もう少しでやるところだったよ」と笑いながら振り返った。実戦での4回転半の準備が、着々と進んでいるようだ。

羽生は、4回転半の状況について「ハーネスでの4A(4回転アクセル)はすごくきれいに降りている。いい感覚になっている」と一定の手応えを得ている。そして「とりあえず今シーズンを目指したい」と今季中の完成に意欲を見せた。習得中の4回転フリップも「(練習で)3回は降りている」と話すなど、実戦での4回転制覇も夢ではなさそうだ。

今季のSP、フリーとも昨季と同じ演目を使うことを発表した。高難度な技の習得に集中する意味合いもある。「このプログラムを負けたままで終わらせられない。完成させて悔いなくこのプログラムを終えたい気持ちが強い」と力を込めた。羽生の考える完成の先には、確実に4回転半が組み込まれている。