中村獅童「少し時代が動いた」初音ミクと共演「超歌舞伎」を語った

ストーリーズ

小林千穂

中村獅童(49)とバーチャルアイドル初音ミクが共演する「超歌舞伎」が始まって7年目の今年、全国上演される。4日の福岡・博多座を皮切りに、名古屋・御園座、東京・新橋演舞場、京都南座と2カ月以上公演が続く。ニコニコ超会議の企画の1つだった「超歌舞伎」が大きく育った理由や、50歳を目前にした今、歌舞伎への思いを語った。

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「超歌舞伎」は16年、幕張メッセで開催された「ニコニコ超会議」で初めて開催された。歌舞伎とバーチャルの融合は当初「色眼鏡で見られた」と、獅童は言う。

「初音ミクさんと歌舞伎って、何やるの? って。ポスター見てもなんだか分かんないですもんね。見てもらわないと分からないんですが、何だこれ? という空気があったんです」

しかし、ふたを開けてみれば5000人の観客が熱狂し、配信を見る視聴者の反応にも大きな手応えがあった。実は初回開催時から大きな思いを抱いていたという。

「いつか歌舞伎の劇場に進出してやると正直思ってました。やってやる、と。だから去年、南座公演が決まった時、少し時代が動いたという気持ちになりました」

ニコニコ超会議の人気企画は、昨年初めて京都南座へ飛び出し、さらに今年は4都市開催へと広がった。ここまで広がった理由を、初音ミクの存在を真っ先に挙げた。

「ミクさんファンの方たちの思いはやっぱりハンパないんです。ミクさんへの愛が超歌舞伎を育ててくれたんじゃないかと、真剣に思ってます。7年間ずっと諦めず、今日まで応援してくださったミクさんファンの方たち、サブカルチャー好きの若者たちが『超歌舞伎』を育ててくれて、1つのジャンルとして作ってくれた。我々と、いつも幕張メッセに集まってくださるファンの方との友情です」

取材会で記念撮影する初音ミク(左)と中村獅童(2022年7月撮影)

取材会で記念撮影する初音ミク(左)と中村獅童(2022年7月撮影)

ここまでの間、獅童が肺腺がんを患うなど苦境もあったが、「超歌舞伎」が支えになった。

「ファンの方たちが『幕張に帰ってきてください』と、心の支えになるメッセージをたくさん送ってくれました。役者とお客様との絆を感じ、年々その思いが高まっています。毎年、幕が閉まるとこみ上げてくるものがあります」

常に「伝統と革新を追求する」「歌舞伎をもっと見てもらいたい」と口にしている。

「人にはそれぞれ、与えられた運命、役割みたいなものがあるとしたら、僕は『超歌舞伎』のようなことをやって少しでも多くの人を振り向かせるのが使命だと思っている。この時代を動かし、歌舞伎をもっともっと変えていきたい。『歌舞伎をもっと見てもらいたい』ってうそくさいかな? 本気で言ってんだけどね。歌舞伎を見てもらいたいし、時代を切り開いていきたいし、歌舞伎界をもっと変えていきたい」

ちょうど南座で公演中の9月14日には50歳になる。節目を前に、一層真剣な表情になった。

「50歳になるんですが、寿命というものもあるからたくさんのことはもう…。いや、そんなこと言うのも早いけど、ちょっと考えますよね。これからどう生きていくか、子供たちの世代に何を残していけるか。30年後、40年後の歌舞伎を考えた時、今からできることをやっていかないと間に合わない。興行のあり方や料金のことも含めて、本気で考えていかないと、時代からも取り残されちゃう」

その時代の流行を取り入れ進化してきた歌舞伎の可能性を信じている。

「僕たちがいなくなった後、『超歌舞伎』が古典で残ってたらおもしろいですよね。歌舞伎は未来を見続けられる演劇だと思うんです。自分たちがいなくなった後、ただ物珍しい保存されてるだけの芸能になってしまうのはつまらない。未来に向かって突っ走っていきたいです」。

◆「超歌舞伎」上演記録  

・16年4月29~30日「ニコニコ超会議」(幕張メッセイベントホール) 「今昔饗宴千本桜(はなくらべせんぼんざくら)」

・17年4月29~30日「ニコニコ超会議」(幕張メッセイベントホール) 「花街詞合鏡(くるわことばあわせかがみ)」

・18年4月28~29日「ニコニコ超会議」(幕張メッセイベントホール) 「積思花顔競(つもるおもいはなのかおみせ)」

・19年4月27~28日「ニコニコ超会議」(幕張メッセイベントホール) 「-千本桜」

・同8月2~26日「八月南座超歌舞伎」 「歌舞伎のみかた」「お国山三」「-千本桜」※澤村國矢によるリミテッドバージョンも

・20年8月16日「ニコニコネット超会議」 無観客の双方向オンラインで「夏祭版 今昔饗宴千本桜」

・21年4月24~25日「ニコニコネット超会議」(幕張メッセイベントホール) 「御伽草子戀姿絵(おとぎぞうしこいのすがたえ)」

・同9月3~26日「九月南座超歌舞伎」 「都染戯場彩」「御伽草子-」※リミテッドバージョンも

・22年4月29~30日「ニコニコ超会議」(幕張メッセイベントホール) 「永遠花誉功」

・22年8月4日~9月25日 全国4都市公演

長男小川陽喜君も出演

今年1月に歌舞伎座で初お目見えした長男小川陽喜(はるき)君(4)も出演する。4月の幕張メッセでの公演にも出演し、大いに沸かせた。

取材会では「大きくなったら何になりたいの?」という質問に、黙ってしまった陽喜君。大勢の取材陣に緊張したのかなと思い、1対1ならともう1度聞いてみた。やっぱり黙ってしまった。獅童が理由を分析し、話してくれた。「『今もう歌舞伎役者なのに、何で聞くの?』って思ってるんだと思う。大きくなったら…という質問にピンとこないみたい」。すでに役者としての自覚を十分持っている陽喜君に、実は失礼な質問をしていたようだ。

陽喜君に対し、獅童も「舞台ではライバルだし、負けたくない」と役者同士の闘志を見せている。

次男夏幹(なつき)君(2)もそろそろ舞台に出たいと言うのではと聞くと、獅童は「僕からはやろうよとは言わないので、自分からやりたいと言えばやるし、言わなかったらずっと出ないです。(やりたいと言ってくれたら)うれしいですけれど、兄弟で違う職業もいいんじゃないかな。兄は歌舞伎で弟はロックとか、そういうの理想なんですけれど。ライバルがまた1人増えるしね」と笑った。

最後は9月25日南座

「超歌舞伎2022」の演目は、書き下ろしの舞踊「萬代春歌舞伎踊(つきせぬはるかぶきおどり)」、古代王朝を描いた「永遠花誉功(とわのはなほまれのいさおし)」。「永遠花-」は、大化の改新のきっかけとなった乙巳(いっし)の変での、蘇我入鹿討伐を題材にしている。8月4~7日福岡・博多座、同13~16日名古屋・御園座、同21~9月3日東京・新橋演舞場、同8~25日京都南座。陽喜君は新橋演舞場は全日程出演。ほかは土日を中心に出演。