女子100メートル障害で12秒87の日本記録を持つ寺田明日香(31=ジャパンクリエイト)は12秒95の予選5組の5着だった。自動的に準決勝に進出できる4着には入れなかったが、5着以下のタイム順で準決勝進出が決まった。同種目の日本勢の準決勝進出は00年シドニー五輪の金沢イボンヌ以来2人目になる。

レース後、寺田は「冷静には走れたけど、ちょっと浮いたところがあったので修正できればいい。目標はファイナル(決勝)に残ることなので、ここからギアを上げて準決勝では12秒6、7台で走れるように頑張りたい」と話した。

14年に長女果緒ちゃん(6)を出産。育児と競技を両立しながら、結果を残してきた。時にこう呼ばれる。「ママアスリート」。

ただ、寺田は言う。「ママアスリートという言葉を無くしたいんです」。時に自身にも、その肩書が付くが、少し疑問に思うことがある。

「当たり前じゃないからそういう風に言われる。パパアスリートって何で言われないんだろうと不思議にも思う。今はママアスリートの存在自体が珍しいから、そういうふうに言われてしまう。今の日本社会は働く女性が子どもを持つとか、結婚するのが当たり前の社会になりつつある。1人の働くママの職業がアスリートというだけ。他の主婦の皆さんと変わらない」。

育児をしながら、代表クラスのトップアスリートという存在は、まだまだ一握り。だからママでもアスリートを続けられると、結果で示したかった。育児と競技の両立が普通のこと、当たり前のことになるように道を切り開きたいと思っている。それが1つの原動力だ。

今大会は寺田の他に、木村文子(エディオン)、青木益未(七十七銀行)と日本勢は3人が女子100メートル障害に出場しているが、16年リオデジャネイロ五輪まで同種目に出たのは金沢イボンヌ(96年アトランタ、00年シドニー)、木村文子(12年ロンドン)の2人だけだった。

08年から日本選手権3連覇。トップに上り詰めたが、23歳で1度は引退し、結婚、出産、7人制ラグビー転向も経て、19年に陸上界に復帰して今に至る。寺田が示したものは、結果以上に大きな価値を示した。