2つのポイントに注目していた。風の影響を大きく受けない国立で、どれぐらいの記録が出るか。コロナ禍で海外勢とのレースが少なく、国内大会のような走りができるのか興味深かった。

山県選手はフィニッシュ姿勢を取らず、走り抜けたように見えた。ある程度の順位が走りながら分かるものだが、もしかすると(6人内側の)1レーン(3着)の選手が見えず、着順をクリアできた感覚があったのかもしれない。号砲が鳴ってからでないと、周りの選手の状況が分からない難しさがあったと想像する。

多田選手はレース前の表情から緊張が伝わってきた。小池選手はここ1、2年、1本目に記録を出し切れない苦しさがある。走り自体は悪くないだけに、3選手とも「やり直せたら…」という思いがあるだろう。

だが、割り切るしかない。400メートルリレーに向け、技術面以上に精神面の調整が不可欠だ。自国開催の重圧、無観客の難しさもあり、選手は「あそこを…」「ここを…」と考えを巡らせてしまう可能性がある。地力はつき、技術面に大きな問題はない。難しい状況で問われるのはコーチを含めた「チームジャパン」としての力。乗り越えれば、リレーの金メダルに期待が持てる。(100メートル元日本記録保持者)