陸上男子110メートル障害の金井大旺(25=ミズノ)が準決勝2組で転倒して、決勝進出を逃した。スタートで飛び出したが、終盤の8台目のハードルに足を引っかけて前のめりに倒れた。それでも立ち上がるとゴールまで走り抜いた。タイムは26秒11で同組最下位に終わった。

レース直後のインタビューでは「前半は飛び出しを意識したけど、後半はうまくいきませんでした。いいレースをして次につなげようと思っていた。今は悔しいです。ツメが甘い。最後までしっかり刻むことができなかった」と下を向いて振り返った。最後に「これまでいろんな人たちに」と言うと言葉がつまり「感謝したい」と絞り出した。

東京五輪を集大成の舞台とし、今季が終われば、歯科医師の道を目指し、現役を退く意向を示しているハードラー。時間は限られているから、今に最善を尽くせると考える。北海道・函館の実家の歯科医院を継ぐべく、歯科医を目指すと決めている。

進学校・函館ラサール高の出身で、昔から「人に感謝される仕事である医療従事者になりたい」との思いが強かった。父の影響もあって、高校卒業後は歯科大へ進むつもりだった。それが全国高校総体で不本意な結果だったこともあり、競技継続を決意していた。東京五輪が決まった高校生の時には、自分が出るなど想像もしていなかった男が、大舞台の準決勝で転倒しながらも、最後まで走りきった。

◆金井大旺(かない・たいおう) 男子110メートル障害。1995年(平7)9月28日、北海道函館市生まれ。函館南本通小3年で陸上を始める。函館本通中3年の全道中学110メートル障害で14秒37の道中学記録、函館ラサール2年の日本ユース2位。18年日本選手権で13秒36の当時の日本新を樹立。法大卒業後は福井県スポーツ協会を経て、19年2月からミズノに移籍。同年の世界選手権は予選落ち。法大4年時は喫茶店、家庭教師、コンビニエンスストアのアルバイトを掛け持ち。179センチ、73キロ。