五輪だからこそ、出てきた言葉だろう。野球競技の初戦前日。鈴木誠也が「野球人口も減っているので、こういう機会に」と言った。正直、開幕戦前に五輪における野球の盛り上がりは感じられない。子どもが親にスケートボードをせがんでいるという話を向けた。野球もグラブが欲しがられるように-。そんな回答を想像していた。

「野球だけじゃなくて、スポーツをやることはすごく楽しいと思う。学べることもたくさんあるので野球に限らずいろんなスポーツを見てもらえたらいい」。WBCでは出てこない言葉に「五輪の風」を感じた。

先日、出張を終え、久々に帰宅した。8歳の息子も身近にある五輪に興奮しているだろう…。だが1年前から夢中の世界遺産・白川郷の合掌造りの動画を延々と見ている。学校の授業で「五輪競技について調べる」という課題があり、トランポリンを選択。「トリフィスって技がある」と教えてくれたが、競技をビデオに録画したものの「パパと一緒に見る」と言って未再生。1人で見るほどの熱量はなく、早く一緒に見てあげたいが、そのころには五輪が終わっているだろう。

愛息に「東京の風」は吹かない。それもしょうがないか。五輪があってもブレずに好きなものがある。岐阜の山奥のそよ風が心地よいなら、それもまたいい。【広重竜太郎】