17、18年世界選手権覇者で初出場の新井千鶴(27=三井住友海上)が金メダルを獲得した。決勝でポレレス(オーストリア)と対戦し、小内刈りで技ありを奪い、優勢勝ちで頂点に立った。技ありを奪った後も攻め続け、最後も寝技で攻め続けた新井は「一本を取りにいこうという気持ちで。最後、悔いを残してこの大会を終わらないように攻めきろうと思いました」と振り返った。同階級では16年リオデジャネイロ五輪王者の田知本遥に続き、2大会連続の金メダル獲得。柔道の日本勢金メダルは5日連続となった。

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新井の高校時代の後輩、杉田綾音さんはこの日、日本武道館で声援を送るはずだった。高倍率の決勝ラウンドのチケットが「奇跡的」に当選。2学年上の先輩の勇姿をこっそり見る予定だったが実現しなかった。「会場で『千鶴先輩~』と応援したかったのですが…無観客開催のためしょうがないです。チケットも当たったので『何かあるな』と思いました」と、“吉兆”を予感していた。

大好きな先輩だ。地元も同じ埼玉・寄居町で高校時代は毎日同じ時刻のJR八高線に乗車して登下校した。78キロ超級だったが、柔道部では新井の練習パートナーを務め、二人三脚で学生時代を過ごした。「真面目な性格で努力家。ずっと千鶴先輩の背中を追いかけてきました。朝練では1人別メニューで他の部員よりもきついトレーニングをしたり、練習量も圧倒的に違いました。当時から練習の虫でした」と思い返した。

高校時代は無名選手が9年間の時を経て、世界最高峰の舞台で頂点に立つまで成長した。杉田さんは「千鶴先輩は表彰台の一番高い場所が似合う。本当に大好きな格好いい先輩。感動をありがとうございました」と感謝の気持ちを伝えた。【峯岸佑樹】