日本男子が4強入りをかけ、ブラジルと対戦する。29年ぶりに8強入りした日本は、2連覇を目指す強豪と対戦する。

日本を率いるのは、「ガイチ」の愛称で親しまれてきたバレー界のカリスマ。中垣内祐一監督は営業時代もエースだった。

Vリーグ1部の堺の経営母体、旧新日鉄住金(現在の日本製鉄)で3年間営業職を経験した。40代半ばで初めてのサラリーマン生活でも、スタンスは変わらなかった。決して偉ぶらず、おごらず、飾らず。かつての同僚たちは、そんな姿を思い出し「慣れない環境でも愚直に取り組み、エースの働きぶりだった」と振り返る。

担当したのはゼネコンを回り、鋼矢板などの建材を売る仕事。指導係だった梶明さん(62)は「上司から内示を聞いたとき、『中垣内って、あの中垣内ですか?』と思わず聞き返しました」と笑う。驚かされたのは、商材知識を蓄え受注を増やそうと、ひたむきに取り組む姿。最後の1年間一緒に働いた勝本靖英さん(53)も「バレーボール選手という肩書を捨て、商材知識やお客様への付き合い方など驚くほど吸収していた」と目を見張る。

仕事で自分からバレーのことは一切出さない。理路整然と営業トークを展開する大男に、商談を終えた得意先から「何かスポーツやっていたんですか?」「バレーの中垣内さんに似ていますね」と言われることもしばしばだった。

当時の経験について、中垣内監督は「仕事を通して学んだのはやはり人対人。それを上回ることがあるのが魅力です」。誠意を持って取り組めば、いつか誰かが評価してくれる。「多少不器用に見えても、私はそんな人を応援したい」。理想の指導者像を探す一助になったと明かしていた。

社業から離れバレー界に戻ったかつての同僚はきょう、準々決勝で16年リオデジャネイロ五輪王者のブラジル戦に挑む。32連敗中の相手との運命の一戦を前に、梶さんは「あの3年間は夢だったのかな(笑い)。結果に対して悔いのないよう、監督の仕事をやって良かったという思いになってほしい」。勝本さんは「日本のバレーボールを支える人は中垣内しかいない」とエールを送っている。【バレーボール担当=平山連】