箱根駅伝4連覇中の青学大の原晋監督(51)は08年に関東学連選抜で過去最高の4位に導いている。予選落ちした11大学から編成された16人の「寄せ集め集団」での躍進。所属が異なる集団をまとめる選手選考、意思統一など、サッカー日本代表にも通じる斬新なアイデアを2回にわたってお届けする。【取材・構成=井上真、田口潤、上田悠太】

 関東学連選抜という混成チームをまとめた秘訣(ひけつ)は実にシンプルだった。

 原監督 今までの学連選抜チームが一枚岩になっていないという気づきは当時からありました。力はあるのだから一体感を作ればいいと。一体感を作るための私の法則は、同じカラー、同じチーム目標を共有させること。単純な構造なんです。

 16人のチームをAとBそれぞれ8人ずつに分け、「どのような順位で終えたいのか、君たち自身で考えてくれ」とミーティングを促した。チームを2つに分けたのは個人が意見を発信しやすいように。「シードを取りたい」「出るだけでいい」「優勝したい」「3番を狙いたい」などの意見が出たという。最終的に全体で「3位」と同じ目標で統一され、チームは一体となった。

 組織が「同じ方向を向く」。文字にすると簡単だが、その方法論は難しい。サッカーの日本代表は所属リーグやクラブ、実力の浮き沈み、年齢もさまざまだ。メンバー選考は監督の専権事項とはいえ、そこに選手から不満が出れば、相互の信頼は築けない。ワールドカップ・ロシア大会のメンバー発表が迫る中、より平等な選考のため、斬新なアイデアを提案した。

 原監督 私ならポジションで個人の明確な序列を作ります。(選考の)プロセスの変化を見られるようにすればいい。

 個人の力量を見極める上で、陸上にはタイムという指標がある。しかし、サッカーは戦術、相手との力関係などもあり、数値化は困難。それでも項目を細分化し、個人に点数をつける“通信簿”の導入を提言する。

 原監督 ポジションごとに、例えばGKなら1、2、3番手と分け、常に現段階なら、このメンバーで戦うとする。今は何となく、の感覚で選んでいる気がします。(選考の)プロセスが可視化されていないから、「気に入っているから、選んだんじゃないか」となる。GKならボールの取り方は5点とか、ジャンプは3点とか。コーチ、スタッフが採点し、監督が「こいつ本当に5点?」と確認していく。「この選手がいい」とは、何をもって言うんだと。数値化してやっていけば、選手にも不平等感が生まれない。

 代表入り、レギュラー入りに必要な基準を可視化し、個人に努力を促す。落選の理由も明確ならば、疑心暗鬼が発生しづらいだろう。チームは1つの方向へ進んでいく。

 選考方法はもちろんだが、強化の柱は育成にある。いまだ日本サッカー界は育成の軸を見つけられていない。(つづく)