2020年東京オリンピック(五輪)で、サッカー男子の日本代表入りが期待される逸材で、今夏に東京から期限付き移籍で横浜に加入した17歳のMF久保建英が、J1リーグ戦初先発で初得点を挙げた。

神戸戦の後半11分、右サイドからのパスをゴール正面で得意の左足でトラップし、左足で先制点。同じバルセロナの下部組織出身の神戸MFイニエスタの前で決め、公式戦4試合ぶりの勝利に導いた。17歳2カ月22日でのゴールは、J1で2番目の年少記録。

これが久保建英だ。偉大なレジェンドの目の前でチームを救う決勝点を奪ってみせた。

後半11分、中盤でボールを受けると右サイドのDF松原へパスを出し、ゴール前へ走る。ペナルティーエリア内でボールを要求し、ワントラップから左足を振り抜き、ゴール右へ突き刺した。「コースは狙った。落ち着いて決めるだけでした」。待望のJ1リーグ戦初ゴールを挙げると、先発起用を決断したポステコグルー監督の元へ走った。「ゴールを決めたら行こうと決めていた。(東京で)試合に絡めていなかった自分を受け入れてくれて感謝していた」と熱い抱擁をかわした。

目標としてきた先輩との初対戦でもあった。2歳でサッカーを始めたイニエスタを父親が参考にして、久保も2歳で始めた。特例の10歳で海を渡り、同じバルセロナの下部組織に入団。12-13年シーズンには30試合74得点と活躍して得点王に輝いた。しかし、18歳未満の外国籍選手獲得でクラブに違反があったとしてプレーできなくなると、同年代の試合やトップチームの試合を観戦するしかなく、本拠地カンプノウのピッチで躍動するイニエスタのプレーも目に焼き付けていた。

日本に帰国して16歳でプロとなり、そんな憧れの存在とついに対戦する機会に恵まれた。同じピッチでプレーするだけでなく、得点まで決めて勝利。ゴールを奪った松原とのパス交換の動きもイニエスタが得意とするものであった。敗れたイニエスタは試合後は無言。取材エリアでは報道陣に囲まれる久保を横目に見ながらイニエスタが通過する場面もあった。久保は「僕は(バルセロナの)下部組織を少しかじっただけ。比べるのもおこがましい。天と地ほどの差がある。これから1ミリでも差を縮められたら」と謙虚に話し、年齢がちょうど2倍の大先輩をも黙らせる結果を残した。

横浜でのデビュー戦だった22日の天皇杯仙台戦では初アシストを記録し、この日は1本のシュートで初得点を奪った。「移籍してからいいことづくしで、ビギナーズラックにならないように頑張りたい。今日は1、2回しかチャンスに絡めず、そんな中でも点を決められたのは、サッカーの神様がいるんじゃないかなと思いました」。取材エリアを去る際には「これからは久保君じゃなくて、久保建英でお願いします」と報道陣に“お願い”もした。プロ意識もより一層高まり、新天地で久保が久保らしく光り輝いている。【松尾幸之介】