悪魔の異名を持つベガルタ仙台のイ・チャンヨブ・フィジカルコーチ(45)が、キャンプ3日目にして過酷なフィジカルトレーニングを果たし、早くも鬼軍曹ぶりを発揮した。

16日、糸満市西崎陸上競技場で約1時間、中距離走を繰り返すメニューにイレブンの表情も険しさを増していった。11年以来8季ぶりにチームに復活した悪魔が、地獄のキャンプをスタートさせた。

前日のペース走では余裕を見せていた選手の顔が、みるみるうちに苦悶(くもん)の表情に変わっていった。閑散としたピッチにイ・コーチがタイムをカウントする声が響く。それに合わせて、黙々と走り続ける選手の息づかいも荒さを増していった。練習の冒頭約30分間、100回を上回る腕立て伏せを含む筋トレと体幹トレをみっちり敢行。その直後の走り込みだっただけに、負荷も増幅した。ペース配分を上げながら、最大800メートルの中距離走を6本走りきるとピッチにひれ伏す選手が続出した。

8年前にもイ・コーチの地獄キャンプを体験したMF関口訓充(33)は「軍隊みたいな感じで、昔から素走りが多かった。これぐらいならまだまだいけるし、いい準備運動になりました。ここからしっかりと上げてけがなく乗り切れるようにしていきたい」と、強い気持ちで乗り切った。MF蜂須賀孝治(28)は「スプリントだったり走行距離だったり身体的な部分をもっと上げていきたい。動けないと戦えないので」と、どん欲にレベルアップを目指している。

第1弾のメニューを終えたイ・コーチは「やらせてみて、みんなきちんと準備をしてきたなという印象ですね」と不適な笑みを浮かべながら手応えを口にした。「昔は自分もせっぱ詰まって選手に負荷もかけましたが、今はサッカーの練習法も変わってきている。心拍数やスプリントのデータをきちんと取りながらやったり、ただ走ればいいというわけではありません」と説明した。

昨年はスプリントの回数が目標値に達しなかった。終盤に失速した原因の1つでもあり、渡辺晋監督(45)は「スプリントの回数を増やしていきたいと彼には伝えた。フィジカル的なきつさはあるが(スプリントの質量は)改善していきたい」と期待を寄せている。【下田雄一】