浦和が5大会ぶり3度目のアジア制覇を成し遂げた。アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)決勝第2戦でアルヒラル(サウジアラビア)に1-0で勝利。2戦合計2-1とし、決勝で3度目の対戦となったライバルを退けた。後半3分にオウンゴールで先制。GK西川周作(36)が好セーブを連発した。22年8月の準決勝から体制が変わる異例の挑戦。マチェイ・スコルジャ監督(51)の就任からわずか4カ月で栄冠をつかんだ。

   ◇   ◇   ◇

真っ赤に染まったスタンドから「We Are REDS」の凱歌(がいか)が響き渡る。DF酒井主将が、GK西川が、FW興梠が、高々とトロフィーを掲げた。「この光景を夢見ていた。信じられない」と酒井。スコルジャ監督をコーチたちが囲み、肩を組んで跳びはねた。

興梠が思わず本音をこぼした。「いやあ、強かった」。ボール保持率は29・4%。サウジの雄に押し込まれた。立ちはだかったのが西川。前半21分にはFWミシャエウのシュートを横っ跳びでセーブ。同42分にもミドルシュートを右手1本で防いだ。終盤も混戦から打たれたシュートをブロックし「(興梠)慎三が前から追って頑張っていて勇気づけられた。逆に、自分が守ればという思いが強かった」。無失点なら優勝。砦(とりで)になった。

耐えて1点をもぎ取ったのが後半4分。MF岩尾のFKをDFホイブラーテンが頭で折り返した。走り込んだ興梠の頭上を越えたが、相手DFも対応できずにオウンゴールを誘発した。試合終了とともに歓喜する選手を見守った指揮官は「表現できる言葉が見つからない」と、タイトルの喜びに浸った。

国内シーズンをまたぎ、準決勝から決勝までにチーム体制が変わる異例の今大会。今季から指揮を執るポーランド人のスコルジャ監督は、1月6日の始動からわずか4カ月でチームをまとめ上げた。選手と個人面談を行い「無人島に1人だけ連れていくなら誰を選ぶ」と問いかけたこともあった。選手同士の関係性やそれぞれの性格を理解し、チーム作りに生かした。

コーチ陣は日本人スタッフと連れてきた外国人で2人1組にした。クラブや選手を知る日本人の声を重視。年齢もキャリアも関係なく選手を起用し、スタメンを外れて腐る選手はいなくなった。全体練習後の練習場は選手がコーチとともに自主練習をする光景が当たり前になった。西川は「試合に出ていない選手の姿勢があるからこそ、今日は勝てた」とうなずいた。

22年4月に開幕し、1年以上をかけてたどり着いた頂点。試合後のゴール裏には「アジア制覇は通過点 本気で世界を獲りに行こう」と横断幕が掲げられた。スコルジャ・レッズが、次は世界の舞台で、強さを発揮する。【岡崎悠利】

◆マチェイ・スコルジャ 1972年1月10日、ポーランド・ラドム生まれ。現役時代は国内リーグでプレーも2シーズンほどで引退。94年にレギア・ワルシャワの下部組織で指導者のキャリアをスタート。02~06年までポーランド代表アシスタントコーチ。その後ポーランドやサウジアラビアでクラブ監督を歴任し18年にU-23UAE代表を指揮。21年にはレフ・ポズナンの監督として自身3度目のポーランドリーグ優勝。日本でのお気に入りの食べ物は無印良品のホワイトチョコがけいちご。

▽DFホイブラーテン(オウンゴール誘発のヘッドに)「FKに関してはかなり話し合っていた。もともとのプランどおりに遂行できた」