1月31日に今冬の移籍市場が終了したが、全体の補強額は昨シーズンを大幅に上回る結果となり、ここ10年間でも2番目に高い数字となっている。

その金額は1億3060万ユーロ(約156億7200万円)。近年、これを上回るのは2年前の2017-18シーズンの2億8820万ユーロ(約345億8400万円)だけである。当時、なぜそんなにも補強額が高騰したかというと、バルセロナがMFコウチーニョ(現バイエルン・ミュンヘン)を約1億6000万ユーロ(約192億円)で獲得したためである。

今シーズンは2年前と比べると、そこまでの高額選手は存在していない。トップはレアル・マドリードがフラメンゴから獲得した18歳のブラジル人MFヘイニエルで3000万ユーロ(約36億円)。しかし入団後、EU圏外枠の問題もあってリーガやチャンピオンズリーグでプレーすることはできず、Bチームのレアル・マドリード・カスティージャでプレーする予定のため即戦力ではない。

即戦力という点で見てみると、ビジャレアルが得点力を求めドルトムントから2500万ユーロ(約30億円)で補強したスペイン代表FWパコ・アルカセルがトップとなっている。ブンデスリーガ通算37試合で23ゴールを記録し、1試合平均0・62ゴールという高い得点力を示している。

続いて際立つ補強となったのが、現在リーグ戦最下位のエスパニョールが残留目指して大きな期待をかけたスペイン人FWラウール・デ・トマースで2100万ユーロ(約25億2000万円)。ベンフィカ・リスボンからの移籍後、すでに3試合3得点と結果を出している。

それにセビリアがレガネスから補強したモロッコ代表FWエン=ネシリが続いている。2000万ユーロ(約24億円)で入団し、すでに4試合に出場している。

チームで最も補強額が大きかったのはエスパニョールで4160万ユーロ(約49億9200万円)。ラウール・デ・トマースの他、エンバルバ(ラリョ・バリェカノ)を1000万ユーロ(約12億円)、カブレラ(ヘタフェ)を900万ユーロ(約10億8000万円)、オイエル(レバンテ)を160万ユーロ(約1億9200万円)で獲得し、リーグ後半戦に向け、巻き返しを誓っている。

日本代表FW久保建英が所属するマジョルカはポソ(セビリア)、クトリス(オリンピアコス)を期限付き移籍で獲得したのみ。一方、アレグリア、アリダイ、ババ・ラフマンの3選手がチームを離れている。

乾貴士がプレーするエイバルはクリストフォオ(フィオレンティーナ)、ソアレス(ビトリア)を期限付き移籍で補強した。退団した選手は一人もいない。

スペイン・トップ3の動向を見てみると、Rマドリードはヘイニエルと契約した一方、オドリオソラをバイエルン・ミュンヘンに期限付き移籍で出している。

バルセロナはブラジル人MFマテウス・フェルナンデス(パルメイラス)やポルトガル人FWトリンコンと契約を結んだが、今冬の移籍市場のための補強ではなく、来季に向けたものとなっている。一方、アレニャー(ベティス)、トディボ(シャルケ)、カルレス・ペレス(ローマ)、ワゲ(ニース)の若き選手たちが出場時間を求めて期限付き移籍でチームを出ている他、バルベルデからキケ・セティエンへの監督交代があった。

得点力不足に悩むアトレチコ・マドリードはパリ・サンジェルマンでプレーするウルグアイ代表FWカバーニ獲得を目指していたが実現せず、最終的に以前所属していたベルギー代表FWカラスコが、今冬の移籍市場最終日に大連一方から入団。翌日行われたマドリードダービーにいきなり途中出場した。

バルセロナのほか、レアル・ソシエダード、ビルバオは今冬、1選手も獲得していない。またこの3クラブの他、Aマドリード、バレンシア、グラナダ、レバンテ、エイバル、バリャドリード、マジョルカ、セルタに支出がない。

全体の補強額はここ10年間で2番目となっているが、放出額は8990万ユーロ(約107億8800万円)でその間の最高記録となっている。選手放出で最も収入を得たのはセルタ。スロバキア代表MFロボツカのナポリ移籍で2100万ユーロ(約25億2000万円)を手に入れている。

上位3強に大きな動きがなかった一方、特に高額でFWを獲得したクラブが後半戦、どのようなパフォーマンスを見せるかに注目が集まるだろう。【高橋智行】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)