[ 2014年2月17日9時15分

 紙面から ]スノーボードクロス

 1回戦敗退も、笑みを浮かべる藤森(撮影・PNP)<ソチ五輪:スノーボード>◇16日◇女子スノーボードクロス

 4年間かけてたどり着いた五輪舞台は、ゴール前で終わった。スノーボード・クロス女子の藤森由香(27=アルビレックス新潟)は、タイムトライアル6位通過の後、1回戦で敗退。キッカーで競っていた選手と板が重なり、着地でバランスを崩して転倒。「五輪が終わってしまったんだな」とつぶやいた。

 7位入賞のトリノ五輪など、今まで出場したほとんどのコースを覚えている。でも、前回バンクーバー五輪のコースだけはどうしても思い出せない。「3本くらいは滑っているはずだけど、緊張、不安、ぼーっとしていて、覚えていない」。公式練習初日、突風にあおられて転倒し、頭部を打撲。試合当日の朝まで調整を続けたが「もう1度転倒すれば、脳に障害が残る可能性がある」とドクターストップ。メークはあふれる涙で落ちた。

 帰国後、部屋に引きこもり、競技をやめる選択肢もあった。だが、小さいときから一緒に滑ってきた姉の由美さんに「納得できるまでやった方がいいよ」と言われた。五輪で力を発揮できなかった、悔しい気持ちに気付いた。

 毎日の腕立て、体幹強化、体重の増加。小柄な藤森にとって、つらいことばかり。途中で投げ出しそうになった時、全日本スキー連盟スノーボード部の柘植メンタルコーチからの言葉が座右の銘になった。「やれるだけ、やってみよう」。

 やり切って臨んだソチ。今回は転倒しても起き上がり、最下位だがゴールした。「この大会に出られてよかった。自分が一番成長できた4年間だった」。一回り強くなって、涙はこらえた。【保坂恭子】