発足2年目を迎えたBリーグのチェアマンである大河正明氏(59)に話をうかがった。

 日本国内にはナショナル・バスケットボール・リーグ(NBL)とbjリーグという2つのトップリーグが存在していた。このために日本バスケットボール協会が国際連盟から資格停止処分を受けたことがきっかけとなり、2016年9月に統一されたプロリーグであるBリーグがスタートした。

Bリーグ大河チェアマン(左)と伊藤華英さん
Bリーグ大河チェアマン(左)と伊藤華英さん

 大河チェアマンは元銀行員であり、サッカーのJリーグで常務理事などを歴任した。Jリーグを生み出した川淵三郎氏(80)が協会改革タスクフォースのチェアマンに就任した直後、2015年2月ごろから手伝い始めた。元々、バスケット経験者ということもあり、日本のバスケット界を見ながら苦しい思いをしていた1人だった。Bリーグ創設の仕事を手伝うことは自然の流れだった。2016年にチェアマンに就任。昨年も話をうかがう機会があったが、物腰柔らかな人柄は1年経っても変わらない。

 「経営面では、2015-16年から今年の決済は、倍になりました。もちろん実働が去年から2017年にかけてなので、観客動員が占めますが」

 Bリーグができてしまった後は「よかった」「楽しい」などの声が聞こえるようになったが、その開幕までの道のりは厳しかった。

 各企業の名前を残しながら、選手のサラリーキャップを外すなど、さまざまな施策を実行した。2016年の時点でも「世界に通用する選手やチームの輩出」「エンターテイメント性の追求」「夢のアリーナの実現」を掲げていた。

 ガバナンスを整えることを目指し、「スマホファースト」「SNS戦略」など、掲げるテーマには近代的なワードが多くある。2年目になった今では、各チームごとに地域に根付いた貢献活動なども目立つ。これをホームタウン活動とも呼んでいる。

熱く語るBリーグの大河正明チェアマン
熱く語るBリーグの大河正明チェアマン

 そんな中で、2年目に入った今年は新たな取り組みが行われている。

 目的は「ビルドアップ」。つまり、競技力を向上していくこと。その中に、「メンター制度」が今年から導入された。メンターとは、選手たちが相談する相手ということになるだろう。現在B1とB2の各チームに1人、計36人のメンターがBリーグにいる。選手にメディアへの受け答えを含むさまざまな教育を行っている。

 また、「良い指導者を輩出する」これも今後のBリーグの発展には重要だという。34都道府県で、クラブライセンシング制度を導入し、U12や、U15の強化も始めた。

 部活動がほとんどのタレント発掘の場になっているバスケット界。中学3年の夏から高校1年の春まで練習ができなくなることで競技力が低下するのを避ける目的もあり、地域密着のチームのクラブチームを発足した。チームのユニホームを着てプライドを持つ。こんなことも、プロ選手を目指すキッズにはモチベーションになる。

伊藤華英さん(右)は笑顔で大河正明チェアマンの話を聞く
伊藤華英さん(右)は笑顔で大河正明チェアマンの話を聞く

 現在、BリーグはB1とB2合わせて1シーズン1080試合を行っている。

 「試合数が多いんじゃないか」

 こんな声を多く聞こえてくる。しかし、大河チェアマンは、世界で戦うためには必要なことだという。

 その根底には、「強いチームが強くなればいい」このような競争意識もプロリーグの発展には必要だという。競争し、切磋琢磨していく。これがなければプロリーグは衰退していく。競争原理や、昇降格があるこの制度こそが競技力向上を促進していくと考える。大河チェアマンは「護送船団方式はだめなんですよ」と力を込める。

 まさに、近未来型。

 新しく始めるものには批判がつきものだが、2年目を迎えたBリーグは、さらに未来を見据えてチャレンジし続ける。この姿勢こそが、選手をやる気にさせ日本のスポーツ界を盛り上げるのだと感じる。

 プレイヤーと運営側の連携こそが、競技力を向上させ、あらたなケミストリーを生むのだ。

 今の時代に生まれ、懸命に戦うアスリートたちのためにも、大河チェアマンは、さらに戦い続ける。見据える先は、私たちが想像もできないビジョンで埋め尽くされているだろう。

(伊藤華英=北京、ロンドン五輪競泳代表)