ミラノ・コルティナ五輪も閉幕まで残り1日となった。日本の獲得メダル数は第16日終了時点で史上最多の24個(金5、銀7、銅12)。連日のメダルラッシュに記事はどうしても日本勢に偏ってしまったのだが、勝敗や順位を超越した五輪ならではの感動もたくさんあった。
フィギュアスケート男子フリーでは、演技直後に氷上で大の字になった李宇翔が心に残った。台湾から28年ぶりに出場した19歳はショートプログラム(SP)を24位ギリギリで突破。1番手で登場したフリーでトリプルアクセルと4回転ジャンプを初めて成功させるなど、すべてのジャンプを決めてみせた。
本格的なリンクの少ない台湾が拠点。憧れは羽生結弦さんで、子どもの頃は動画を見ながら独学で練習していたという。結果は23位。それでも日本人が鍵山優真らのメダル争いを祈るような気持ちで見ていたように、台湾の人たちも同じ気持ちで李の演技に声援を送っていたに違いない。
今大会は雪や氷と無縁の国の黒人選手も増えた。アフリカ勢は8カ国。カリブ海諸国は4カ国が参加した。スキー距離4種目に出場したハイチのステベンソン・サバルは3種目で完走。20キロ複合で最後の64番目にゴールすると、大歓声にストックを振って応えた。彼らのひた向きな姿は、大切なのは勝つことではなく、夢に向かって挑戦することなのだというスポーツの本質を思い出させてくれた。
10代の才能が花開いたスノーボードでは、女子パラレル大回転に出場した大会最年長52歳のクラウディア・リーグラー(オーストリア)に驚かされた。果敢な滑走で決勝トーナメントに進出したからだ。同1回戦敗退も「年を重ねてもチャレンジできる」と満面の笑みでテレビのインタビューに答えた。五輪は若者やエリートだけの大会ではないのだと思った。
アルペンスキー女子滑降では現役復帰した元女王リンゼイ・ボン(米国)が旗門に接触して激しく転倒。ヘリコプターで搬送された。すねの骨を複雑骨折する重傷だった。4大会ぶりの金メダルの夢を砕かれた41歳は病室からSNSにこんなメッセージを書き込んだ。
「人生で唯一の失敗は、挑戦しないこと」
今大会で一番胸に刺さった言葉である。それぞれの五輪。敗者などいないのだと思った。【首藤正徳】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「スポーツ百景」)


