コロナ禍のヒット商品の1つと言えば、「プロテイン(タンパク質)」だろう。従来はアスリートやボディービルダーが飲むイメージが強かったが、最近では美容や健康、減量などを目的に摂取する人が急増し、市場が拡大している。各企業は味や成分などを工夫し、手軽さや飲みやすさにこだわった商品を相次いで発売。「プロテイン=まずい」の時代は終わり、今では一般人の“必需品”となっている。

スーパーや薬局などでは、多数のプロテインが袋や缶などに入って陳列されている。味もさまざまで、ジュニアや女性向けなどの商品も目立つ。コンビニエンスストアでは、総菜やサラダなどの容器に「タンパク質○グラム」とシールが貼られた高タンパク商品が並ぶ。手軽に摂取できるバータイプなどもあり、店舗によっては「プロテインコーナー」が登場するほど注目度が高まっている。

さらに、今年4月には日清食品が15グラムの高タンパク質を押し出した「カップヌードルPRO」を新発売。ラーメン業界にも、プロテインブームが到来するほどになっている。

プロテインの国内市場は、驚異的な成長を遂げている。20年度は約770億円で、過去10年で約6倍に拡大。背景には健康志向の高まりや、コロナ禍の外出自粛でコロナ太りとなり、ダイエットや筋力強化に取り組む人の増加がある。

プロテイン初心者である女性の影響も大きく、市場拡大を後押し。朝食代わり、仕事の合間のおやつとして飲む人もいる。海外セレブのように割れた腹筋や美尻に憧れ、本格的なトレーニングに励む筋トレ女子にも欠かせない必須アイテムとなっている。

ある大手食品メーカー主力商品シリーズの19年度の売り上げは134億円。発売した15年度から19倍以上に伸びたという。ココア味の定番から、女性を意識したミルクティーやカフェラテ風味などもあり、消費者に飽きさせない工夫が施されている。

プロテイン市場は、コロナ禍の生活様式の変化で今後はどうなるのか。海外メーカーも参入して競争も激しくなり、味などの違いを際立たせることはより難しくなるだろう。今のプロテインはおいしいためついつい飲みすぎてしまうが、あくまでも「栄養補助食品」であることを忘れてはならない。トレーニングをしないで「体に良い物」と勘違いして、食事を変えないで飲み続けると太る…。実体験で5キロ増量した。ただ摂取すれば良いというわけでもなく、何事もバランスが大事ということか。プロテインとは上手に付き合っていきたい。【峯岸佑樹】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)

スーパーに並ぶプロテイン商品(撮影・峯岸佑樹)
スーパーに並ぶプロテイン商品(撮影・峯岸佑樹)