【ニューヨーク9日(日本時間10日)=吉松忠弘】大坂の夏は、まだ終わらない! テニスの全米オープンで、日本人初の4大大会シングルス女王となった大坂なおみ(20=日清食品)は、一夜明けたこの日、日本を含めた世界各国の取材に追われた。純白のワンピースに身を包み、女王恒例の摩天楼での撮影会から、日米のテレビ局出演まで、ハードな日程をこなした。10日に発表された最新世界ランキングは世界7位となり、日本女子では伊達公子の4位に次ぐ歴代2位となった。
世界的ブランド「コムデギャルソン」のワンピースに身を包んだ新女王は、ややぎこちなかった。黒いハイヒールは、180センチと長身の大坂をますます高く見せた。腕に抱く純銀のトロフィーは、ティファニー社製だ。「本当にすてき。うれしい」。すべてが一夜で変わった。
マンハッタンの中心部にあるロックフェラーセンター。雨のため、当初予定されていた70階にある屋外展望台での撮影は見送られた。室内に移り、エンパイアステートビルを背に、毎年恒例の女王撮影会が行われた。「さすがにちょっと疲れた…」。笑顔も心なしかこわばった。
その前に現地時間の早朝から、日本の夜の時間帯に合わせ、宿泊している「キタノホテル」から日本のテレビ局5社に生出演した。性格は自称「極端なシャイ」。何度も同じことを質問されても、笑顔で答え続けた。プロとして、世界的なアスリートとして、少しずつ女王の意識が芽生えた。
優勝した前夜、ベッドに入ったのは午前0時半頃だった。大坂にしては珍しく、お気に入りのテレビゲーム「プレイステーション」に手は出さなかった。それでも興奮して、なかなか寝付けなかったという。
家族やスタッフは、快挙を夜通しで祝った。大坂にテニスの道筋をつけた父フランソワさんは「2時間ぐらいしか寝てないかな」。日本の報道陣に気を使い「みんな、カラオケで(なおみを)祝ってくれた?」とジョークを飛ばした。
世界ランキングは、19位から一気に7位に上昇した。75年に現行のコンピューター世界ランキング制度ができて以来、日本女子がシングルスでトップ10入りしたのは、伊達公子と杉山愛の2人だけ。その杉山の最高位8位を抜き、日本歴代2位をマークした。
一夜明けても、夢の世界にいるようだった。「まだ実感がない」。それでも、しっかりと次の目標は見据えている。「4大大会に優勝するのはテニス選手の夢。また優勝したいし、世界1位にもなりたい」。今週、日本が生んだ世界の新女王は、17日開幕の東レ・パンパシフィック(東京・立川)に出場のため、凱旋(がいせん)帰国する。