2020年東京五輪パラリンピック組織委員会は17日、グランドスタートの聖火ランナーとして11年サッカー女子ワールドカップ(W杯)ドイツ大会で優勝した女子日本代表「なでしこジャパン」を発表した。

聖火リレーは来年3月26日、福島「Jヴィレッジ9番ピッチ」を出発する。会見場には世界一メンバーの佐々木則夫前監督、DF岩清水梓、FW安藤梢、GK海堀あゆみが出席した。

東日本大震災で被災した日本に勇気を与えたことが評価されて11年8月には団体としては初の「国民栄誉賞」を受賞。東京大会が掲げる「復興五輪」のテーマに最も合致する存在として、記念すべき最初のランナーに決まった。

なでしこジャパンとJヴィレッジは深い関わりを持つ。97年に施設が誕生し、すぐに代表合宿で使った。当時、女子代表の年間強化費は1500万円程度(推定)で、数億円の男子代表とはケタが違った。資金難から、土のグラウンドで合宿することもあった。初めてJヴィレッジの芝を踏んだ選手たちは「すごい、全部芝生だ」と歓喜した。Jヴィレッジは女子日本代表の「聖地」になった。

04年にはJヴィレッジをホームに、なでしこリーグの「東京電力マリーゼ」が誕生。11年の震災までリーグ戦も行われ、多くの女子選手がプレーした。経済的にも恵まれず、認知度も低い女子サッカーを支え、応援してくれたのはJヴィレッジだった。

だからこそ、選手たちの思いは強い。「厳しい練習に耐える心のよりどころ」でさえあった。震災のショックは大きかった。「被災者のため」「被災地のため」に心を1つにした。W杯のミーティングでは震災時のビデオで心を奮い立たせ、ドイツと米国を破って初優勝した。

そんな思いが詰まったJヴィレッジに、あの代表選手たちが戻ってくる。チームを指揮した佐々木則夫監督と選手たち。大黒柱だったMF澤穂希、守備の要のDF岩清水梓、点取り屋のFW安藤梢、今も代表で活躍するFW岩渕真奈…。復興への思いで世界の頂点に立った選手の1歩が、国立競技場の「復興五輪」開会式へと続く。「なでしこジャパン」が日本列島に東京五輪の興奮を運ぶ。