19年ジュニアグランプリ(GP)ファイナル王者の佐藤駿(16=フジ・コーポレーション)が完全優勝した。

前日のショートプログラム(SP)を81・84点で首位発進し、大技の4回転ルッツを着氷したフリーも全体1位の147・34点。合計229・18点で、シニア転向1年目の初タイトルを手にした。20年冬季ユースオリンピック(五輪)金メダルの鍵山優真(17=星槎国際高横浜)は2位。全日本選手権は12月24日から長野で行われる。

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佐藤がリベンジVを遂げた。見せ場は冒頭、4回転ルッツだ。現在、成功例がある最高難度のジャンプ。オーバーターンとなって着氷が乱れたが、基礎点11・50点は認定され、そこから出来栄え点(GOE)が0・92点の減点という惜しさだった。演技直前の6分間練習で初導入、初成功し「着氷はできたので大きな進歩」と納得。続く4回転のサルコーとトーループは転倒したが、後半はトリプルアクセル(3回転半)-3回転トーループの連続ジャンプ成功など持ち直した。

好敵手で親友の鍵山に勝つのは昨年12月のジュニアGPファイナル以来。先月の関東選手権では自滅して88・79点もの差をつけられた。「気合が空回りした。優真に勝とう、ではなく、自分に勝たないと」。借りを返したのは鍵山ではなく自分。大会後、フランス人の振付師ブノワ・リショー氏に動画を送って表現のリモート指導を受け、14年4大陸選手権優勝のアドバイザー無良崇人氏からは4回転3種4本(ルッツ、サルコー、トーループ2)の高難度構成のジャンプに関する助言を受けた。「あまり勝った実感はないけど、成長はできているかな」と自分を向いて進化を示した。

下旬のGPシリーズNHK杯(大阪)と12月の全日本選手権(24~27日、長野)へ、まずはシニア初の戴冠。「まだSPをノーミスで終えたことがない。今後の試合では両方ノーミスで演技できるように滑り込んでいきたい」。日本期待の高難度ジャンパーが甲州で自信を深めた。【木下淳】