04年アテネ五輪陸上男子ハンマー投げ金メダリストで、スポーツ庁の室伏広治長官(46)が、難病の「悪性脳リンパ腫」と闘っていると7日、週刊新潮のニュースサイト「デイリー新潮」が報じた。室伏長官は同日、都内で日刊スポーツなどの取材に否定はせず「大丈夫」と語った。東京五輪・パラリンピック組織委員会時代から成功へ力を尽くす大会へ、公務を続ける。

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「鉄人」が人知れず病と闘っていた。病状に踏み込んだ一部報道について、室伏長官が取材に応じ「個人情報ということで、話さないつもりです」。明言は避けたものの「影響ない、という風にさせていただいてます」と闘病自体は否定せず、スポーツ庁を通しても「これまでも公務に支障を来さないよう努めており」と公務との並行を認めた。

体調に関しては「大丈夫です」と明言し「応援よろしくお願いします」と笑顔を見せた。続けて、力強く「石も俵も持ち上げていますので」。長官室には米俵6俵が積んである。1俵60キロ。これを軽々と持ち上げて来客をもてなす面会を続けていることを自ら話題に挙げ、健在だと強調した。

室伏氏は昨年10月、組織委スポーツディレクター(SD)を退任し、スポーツ庁の2代目長官に就いた。デイリー新潮によると、室伏氏が発症を知ったのは「昨秋」で時期は重なる。歩行が乱れるなどの異変を感じたため検査を受けたところ、脳に腫瘍が見つかり、開頭手術の結果、悪性リンパ腫と診断されたという。

公表することなく闘病生活を送り、昨年末ごろまで抗がん剤を投与しながら入院。年明けから徐々に現場復帰した。3月25日の聖火リレー出発式では福島・Jヴィレッジに出張するまでに回復し、今月1日にはスポーツ庁の職員に向けて霞が関の庁舎で直接、東京大会の成功へ訓示していた。

デイリー新潮では、今月半ばに再入院する予定も触れられている。自身の骨髄から取り出した細胞を、抗がん剤治療後、再び点滴で自身に移植する手術を受けるとの情報。順調にいけばゴールデンウイーク明けには完治し、退院できるという。この記述に関する取材に対しては「業務のところはちゃんとやるということで、ご理解いただいて。そういう言い方をさせてもらっています」と説明した。

昨秋、長官就任前の日刊スポーツのインタビューでは、生きる上での指針「一投一念」を色紙に記した。目指すは1つで「今後も東京大会の開催に向けて、関係者と一丸となって全力で努めてまいります」と公務を全うする覚悟を示した。

国際オリンピック委員会(IOC)や各国際競技団体(IF)からの信頼も厚い鉄人。座右の銘は「疾風に勁草(けいそう)を知る」だ。強風の中でこそ強い草が分かる-。室伏氏は「高みを目指せば目指すほど風は強くなる。それを乗り越えてこそ、自分も強くなっていくもの」と解釈している。難病を克服し、今夏の開催に貢献することしか考えていない。【木下淳】

◆室伏広治(むろふし・こうじ)1974年(昭49)10月8日、静岡県生まれ。千葉・成田高-中京大-中京大大学院。男子ハンマー投げの日本記録(84メートル86)保持者で、00年シドニー五輪から4大会連続出場。04年アテネで金、12年ロンドンは銅。世界選手権では、01年エドモントン(カナダ)大会で銀、03年パリ大会は銅、11年大邱(韓国)大会で金に輝いた。16年6月の日本選手権を最後に現役引退。東京五輪・パラリンピック組織委員会では理事とスポーツディレクターを担い、日本オリンピック委員会や日本陸連の理事、東京医科歯科大の教授も務めた。20年10月からスポーツ庁の2代目長官に就任。187センチ。