フィギュアスケート世界国別対抗戦(15~18日、丸善インテックアリーナ大阪)に出場する日本代表男子の羽生結弦(26=ANA)が12日夜、大会中継局テレビ朝日系のニュース番組「報道ステーション」(月~金曜、午後9時54分)に収録出演した。

プロテニスプレーヤー松岡修造氏のオンライン取材に応じる形で登場。まずは銅メダルを獲得した3月の世界選手権(ストックホルム)の感想を聞かれ「体は問題ないですし。もちろん世界選手権が終わった後のダメージや疲労はあると思うんですけれども、しっかり前を向いて進んでいます」と答えた。

続けて「自分が滑ることによって、感染リスクがいろいろ大きくなってしまうんじゃないかな、という思いはあるんですけど、自分が滑ることの意味を再確認させていただいた。少しでも、僕が滑ることによって何かのためになるのであれば、滑りたいなという風に今は思います」と心境の変化を明かした。

コロナ禍の1年については「試合やショーがなかったことも含めて、モチベーションが完全に4回転半(ジャンプ=クワッドアクセル=4A)になっていた」「時間があったからこそ、すごく集中して4回転半というものにチャレンジできてましたし」と、あらためて経緯を説明した。

4回転半の完成度について確かめられると「まだ降りてないので、話になってないんですよね」と笑い「本当に降りられないんですよ、なかなか。本当に難しくて。例えば1日の練習が2時間だとしたら、うち1時間45分は確実に4Aに使ってた日とかありますし。それでも跳べないですね。何千やってるんですかね。トライとしては、たぶんもう1000を超えてるとおむんですけど。ホントに死に物狂いでやって跳べてないんですよね。人間の可能性として、ホントにできんのかな、ってのはあるはあるんですけど」と、前人未到、世界初の成功に向けた道の険しさを口にした。

3連覇が懸かる22年北京五輪(オリンピック)へ。現世界王者ネーサン・チェン(21=米国)に立ち向かうため、負傷のリスクや、3回転半も跳べなくなるほど精神的に落ち込む可能性がある4回転半の「回避」を一案として示されると「4回転半を跳びたい理由の根本は、納得したい、なんです。自分自身が胸を張って、これが最高の羽生結弦の完成型だ、理想の羽生結弦だ、ってところにたどり着きたい。その中の一部が4回転半だと思うんですよね。だから、今までは4回転半を降りればいい、成功すればいい、世界初の着氷者になればいい、と思ってたんですけど、そうじゃなくて、完璧な…具体的に何を持って完璧って何だと聞かれたら時間が収まらないくらい語れてしまうんですけど、4回転半も含めた、ランディングもキレイに流れのある演技をしたいなと思います」と夢を語った。

フィギュアスケートはスポーツ、勝負という観点には「僕らは採点競技。スポーツでありながら、芸術をはらんでいるものだと思うんですよね」。そこには、やはり4回転半が密接に絡んでくる。「やっぱ、スポーツとして極めたい理由でアクセルを跳びたいということもあるんですけど、芸術としてもアクセルを跳びたい、っていう理由があるんです。最終目標は4Aを含めた完璧な形のプログラムだと思うんですよね。そこを表現しないと、自分自身は納得できない」と言葉に力を込めた。

究極の理想へ、最後に手応えも示した。

「昔はがむしゃらに、もっとトリプルアクセルの延長線上で頑張ってやれば回るんじゃないか、っていう感じがあったんですけど、最近、4回転半っていうものは跳び方が違うんだな、って感じ始めて。その跳び方が、やっと4回転半らしくなってきた。今は別物のジャンプとして考えてますけど、やっとその段階までそこまでいけたな、と。絶対にやってやるんだっていう気持ちはあります、表面上は。ふふふ。でも本音はどうかと言われれば、崩れ落ちそうな時もあります。でもたぶん、ねえ、思うんですよ。皆さんも心が弱い時、つらい時とかって絶対にあるじゃないですか。もう何もかも投げ出したいなあ、みたいな。みんながみんな、そうやって思って苦しみながらも闘い抜いているので、僕も闘い抜きたいなと思ってます」

締めくくりに「頑張れ」とエールを送られると「頑張ります」と右の拳を握って満面の笑みを浮かべた。

羽生は今週、世界国別対抗戦に出場する。日本の前回優勝に貢献した17年以来2大会4年ぶり3度目。宇野昌磨(23=トヨタ自動車)とともに日の丸を背負う男子のショートプログラム(SP)は15日午後6時25分から、フリーは16日午後6時10分から始まる予定となっている。【木下淳】