昨夏の東京オリンピック(五輪)金メダリスト阿部詩(22=日体大)が、貫禄を見せつけて優勝した。

10月の世界選手権(タシケント)も制しており、全日本柔道連盟の早期内定制度によって来年5月の世界選手権(ドーハ)代表「第1号」に。全日程終了後に開かれた強化委員会で承認され、正式に決定した。2連覇が懸かる24年パリ五輪へ前進した。

日本では18年大阪大会以来4年ぶりのGS制覇だった。過去3勝1敗。手の内を知り尽くす志々目愛(28=了徳寺大職)を、延長に入って一気に攻め立てる。連続攻撃で、担ぎ技に入ったところで3つ目の指導を奪った。反則勝ち。安心した表情で頬を緩め「なかなか状態が整わない中、勝ち切れて良かった」と振り返った。

言葉通り、大会2週間前に右膝の靱帯(じんたい)を痛めていた。2日間、練習を休んだ。「出ない選択肢はなかった」と気丈だった阿部だが「確かに練習があまりできていなくて」と迷ったほど。体調不良もあり、この日も鼻声だったが「ここで立ち向かわないといけない」と出場を決意して結果を出した。

実際、兄の一二三(25=パーク24)も世界選手権で優勝した後、調整期間の短さを理由に今大会は欠場した。一方の妹は「五輪や世界選手権の優勝者の重圧」に向き合い、初戦から3試合を一本勝ち。決勝もライバルを倒して「過去の対戦と比べて、地力がついたのかな」と進化を証明した。

兄とともに東京五輪で金メダルを獲得した後、両肩を手術した。昨秋のことだった。長く戦列を離れる代わりに、高校時代からの脱臼癖が治った。「練習できている分、五輪より状態はいい」とまで言うほど状態は上がり、約2カ月前のウズベキスタンでは3度目の世界女王に。続く今大会も頂点に立って、半年後の世界切符を守った。

パリ五輪へつながる重要な大会、世界選手権へ。今後は休養し、年明けに練習を再開し、準備する。「ドーハで勝って五輪2連覇を達成したい」と無双が続きそうな情勢だ。【木下淳】