社会人Xリーグが設立30周年を機に今年創設した最上位カテゴリー「Xリーグプレミア」が開幕し、富士フイルム海老名Minerva AFCがIBM BIG BLUEに競り勝った。就任5季目を迎えた朝倉孝雄ヘッドコーチ(HC=57)が、チームを国内トップカテゴリーに導いてから3季目にして初の開幕戦勝利をつかんだ。
第1クオーター(Q)開始2分44秒、司令塔のクオーターバック(QB)コルデイロ・シェヴァンが新人ワイドレシーバー(WR)山口基樹に38ヤードのタッチダウン(TD)パスを通して先制。第2Qに90ヤードをドライブされて追いつかれたものの、直後の攻撃シリーズで再びリードを奪った。
自陣38ヤードからコルデイロがランとパスで攻め上がり、最後は自ら3ヤードTDラン。23年に最高峰の米NFLでドラフト候補に挙がった実力を誇り、来日2年目のプロ契約エースが決勝点を奪った。
朝倉HCが「走りすぎ」と苦笑いしたほどのランでは、チーム最多の16回キャリーで計48ヤードを獲得。パスでは試投24回で15本を成功させて158ヤードを稼ぎ、試合MVPに選ばれた。
守備陣も奮闘し、後半は無失点。ディフェンスバック(DB)小野敏郎の6・5タックルを筆頭に体を張って、前半のリードを守り抜いた。最終の第4Q残り1秒では、背後のエンドゾーンまで残り11ヤードまで攻め込まれたが、早稲田大(早大)出身で全日本常連の相手QB政本悠紀に、米国人ディフェンスライン(DL)レーン・セカンド・テレンスが、ほぼQBサックの急襲でパス失敗を誘発して試合終了。選手たちはフィールドになだれ込んで喜びを爆発させた。
それだけ勝ちたかったターゲットだった。昨季までXリーグ1部は上位のX1スーパーと下位のX1エリアに分かれており、そのエリアからスーパーに富士フイルム海老名が昇格した1年目、屈辱にまみれた。24年5月、春のパールボウルトーナメントでIBMと対戦。3-55で粉砕されていた因縁があった。同年10月の秋季リーグ戦は17-17の引き分けに持ち込んで意地を見せた一方、昨年11月は24-28と再び敗れていた。
昨季の年間順位(IBMが8位、富士フイルム海老名が9位)もさることながら、今年4月のプレミア開幕前会見でライバルを問われた朝倉HCが「IBM」と名指ししたほど意識していただけに「ずっと勝てなくて、ようやく壁を越えられた」と充実感に浸った。主将のオフェンスライン(OL)加倉井翔も「こんなに大きな球場で…自分は幸せ者です!」と、FFグリーンのレプリカユニホーム姿で三塁側のスタンドを埋めた大応援団に感謝した。
朝倉HCは現役時代、熱血漢のLBとして早大高等学院、早大ビッグベアーズの主将を務めた。アサヒビール(現オリエンタルバイオ)シルバースター時代には3度の日本一。監督としては母校を2度の甲子園ボウルに導き、X初采配へ。富士ゼロックスとして活動していたチームを22年から率いる。指導も浸透し、X最上位に到達してからは初の開幕星。攻守に安定してきた。
「今シーズン、長い長い10試合。マラソンのような1年になる、その初戦を勝てたことは大きい。守備陣も新戦力がうまくミックスして頑張ってくれたし、攻撃も後半最初のシリーズで8分以上、使ってくれた。そこも大きかった」
中でも、チーム最多の4レシーブで65ヤードを獲得したWR山口を絶賛。チーム全体としては「ドロップ(落球)が多くてショートを稼ぎ切れなかった」と反省したが、山口に関しては「2部(関東は実質3部)の成蹊大から来てくれた。そういう選手がルーキーイヤーの開幕戦から結果を出してくれたことは、とても大きい。本当にいい選手で、キャッチ良し、当たりも良し、サイズ(173センチ)からは想像できない激しいプレーをしてくれる。どうしてもリクルーティングでは(上位陣と)バッティングして敵わない部分もある中、彼のように下にも埋もれていた選手はたくさんいる。今後も『ネクスト山口』みたいなアスリートを、どれだけ見つけられるか」
結果、宿敵との勝負をTD1本差で制し、残り1秒まで分からない熱戦で盛り上げた。ビッグエッグ開幕2戦に計2万4299人を集めた目の前で。
「こういう環境は、やる選手もワクワクするし、第1試合もオービックさんが王者パナソニックさんを1点差(21-20)で破った。見に来てくださった方も接戦を楽しんでいただけたと思うし、もう現場は、いい試合をするしかないので。無料開放でもあり、こうして興味を持ってもらえる機会があったことは良かったと思います」
Xプレミアは初年度11チームで発足したため、バイウィーク(試合のない週)がある。富士フイルム海老名は第2節を休み、第3節で格上と激突。24年までライスボウル3連覇の富士通フロンティアーズに挑む。
「次の試合まで47日も空くんでね。その分、今日は多少の痛みを抱えた選手にも最後まで頑張ってもらったし、負傷者にもしっかり戻ってきてもらいたい。小細工が通じない相手ですから、真っ向勝負でいってみたい。今の立ち位置がどれぐらいなのか。今回もIBMの壁を越えたし、次も挑戦。会社はもちろん、海老名市の大きな後押しも受けていますので、また期待に応えられるよう、しっかり準備していきたい」
次戦は6月20日、敵地の富士通スタジアム川崎に乗り込む。【木下淳】


