<高校ラグビー:桐蔭学園43-0大阪桐蔭>◇準決勝◇5日◇花園

 桐蔭学園(神奈川)が初の単独優勝に王手をかけた。4月の全国選抜大会優勝の大阪桐蔭(大阪第2)に、WTB山田雄大(3年)の3トライなどで快勝し、決勝では同選抜大会準優勝の東海大仰星(大阪第1)と対戦する。桐蔭学園は、3季前の10年度大会決勝で、東福岡と同点、両校優勝となっていた。

 盤石の強さだった。得意のFWで数次の攻撃を仕掛け、最後はBKに展開しトライにつなげるラグビーで、春の高校王者を0封。完膚なきまでにたたきのめした。藤原秀之監督も「(勝敗が)逆の可能性もあっただけに、いいラグビーができた。0点はびっくり」と、驚く完封劇だった。

 いきなりの先制パンチで流れをつかんだ。今チームが目指す“継続”ラグビー。試合開始のホイッスルが吹かれただけで、15人が流れるようにボールをつないだ。前半1分。敵陣22メートルラインのラックから右へ展開。最後は山田がインゴールに飛び込んだ。

 同僚が「山田が点を取ると波に乗る」と話すチーム一のムードメーカーだ。しかし、初戦の桂(京都)戦で1トライを挙げただけで、以降は沈黙状態。前日の夜、藤原監督が山田の部屋を訪れた時に「お前、何もやってないぞ」とハッパを掛けられた。

 「すいません」と謝ったが、心の中では「絶対にやってやろう」と誓った。その負けじ魂が先制トライに結びついた。圧巻だったのは、後半25分の90メートル独走トライだ。自陣ゴール前約15メートルから、50メートル6秒1のチーム一の俊足で一気に駆け抜けた。

 世田谷学園中では柔道部だった。世界王者の棟田康幸、吉田秀彦を生んだ名門で、棟田には指導を受けた経験もある。「柔道で養った粘りや体幹の強さが役に立っている」。そこに、高校入学後、筋トレを重視。62キロの体重が77キロまでに増えたが、スピードは決して落ちていない。

 憧れは、3季前の両校優勝時の立役者、WTB松島幸太朗(サントリー)だ。しかし「絶対に今回は単独優勝です」と、松島超えも誓う。東日本の高校が単独優勝したのは、16季前の97年度第77回大会の国学院久我山が最後。世界一の棟田譲りの強さと、高校一の松島を上回るステップで、山田が桐蔭学園に新たな歴史を刻む。【吉松忠弘】