<柔道:世界選手権>◇12日◇男子66キロ級◇東京・代々木第1体育館

 男子66キロ級は超大穴の森下純平(20=筑波大)が初出場初優勝した。

 森下の体が無意識に動いた。決勝残り2分、払い腰にクナの体がきれいに倒れた。無印男が1本勝ちでまさかの金メダルだ。「信じられない。体が自然に動いた。まさか取れるとは思わなかった」。メダルを持つ手が震えていた。

 準々決勝で世界ランク1位の前回覇者ツァガーンバータル(モンゴル)を撃破した。「ここまで来たら勝ってやると前に前に出た」。緊張と疲労で両足がけいれんした。それでも「試合をやっていくうちに慣れた」。若さでつかんだ大金星で波に乗った。

 異例の大抜てきだった。代表最終選考会の選抜体重別は初戦敗退。国際大会の優勝もない。通常、代表に選ばれることはないが、全日本柔道連盟(全柔連)の首脳陣は、森下の「1本が取れる柔道」にほれ込んだ。その期待に見事に応えた。篠原監督も「非常に価値ある金」と絶賛した。

 代表合宿では食事の仕方がきたないと何度も注意を受けた。練習では篠原監督から「そんなんじゃ、代表から辞退しろ」と毎日のように怒られた。それでも「期待されていなかったからプレッシャーもなかった」。結果以上に大きな自信を得た。「自分の技がある程度(世界に)通じるのは分かった」。ロンドン五輪へ、シンデレラボーイが誕生だ。【吉松忠弘】