<巨人2-3ソフトバンク>◇22日◇東京ドーム

 王ソフトバンクが、交流戦で4チームの大混戦を制し、執念の逆転初優勝を飾った。巨人との決戦。前夜の悪夢の逆転サヨナラ負けから立ち直り、9回勝ち越して競り勝った。王監督としては03年日本一以来の優勝だが「苦しい戦いだった」と明かした。交流戦前、パ首位西武との7・5差は、ついに3差に縮まった。ラストイヤーともいわれる今季、ペナントレースでも逆転を狙う。交流戦は2位が阪神(前年の交流戦順位がソフトバンクより下位)、3位は日本ハム、4位巨人となった。

 ソフトバンクになっての「初優勝」は、1点差勝利でものにした。「総力戦もいいところだったね」。王監督の言葉がすべてを物語る。

 執念の継投だった。1点リードの9回。マウンドには“暫定”守護神の柳瀬を送り込んだ。1死一塁から巨人が勝負をかけた鈴木尚の二盗を山崎が刺す。代打に左の清水がコールされると王監督はすかさず、左のニコースキーをつぎ込んだ。前夜の延長12回、巨人の左攻勢に王監督は右の佐藤で勝負に出て3連打を食らい、負けた。「あそこで左をつぎ込めないところがね。オレの責任」と自らを責めた。

 この日は勝負所で迷わずズバリ、采配が実った。結果は二ゴロ。「みなさん、ありがとうございました。今日はお互いに負けられない試合。超満員の熱烈な応援のおかげで、何とか勝つことができました」。東京ドームのファンに何度も手を振り、大きな拍手が起きた。

 試合前、普段とは違う厳しい表情の王監督がいた。ナインには「今年は借金も背負い、開幕から苦しい戦いだったけど、勝利の感激を追い求めて頑張ろう」と絶対に負けられない試合とゲキを飛ばした。相当悔しかったのだ。

 執念は、王監督がペナントレースの首位西武追撃のキーポイントに挙げる「ヤングパワー」に伝わっていた。同点の9回表、クルーンから先頭辻が遊撃内野安打で出塁。山崎の犠打をクルーンが一塁へ悪送球して無死一、二塁のチャンスを得ると、代打金子も155キロの直球を投前にキッチリ転がした。「監督にはフォースプレー(アウト)でもいいと言われた。決められて本当によかった」。続く本多の二ゴロで、三塁走者の辻が、寺内の一瞬のジャッグルを見逃さず好判断で生還した。辻は「一度はストップしたけど、セカンドが『エラー』したのを見ていけると思った」。

 王監督はダイエー時代の03年に日本一になった。だが、その後は優勝がない。ラストイヤーともいわれる今季、欲しいのはリーグ優勝と日本一のタイトルだ。

 交流戦前、首位西武とは7・5差。「今はまだ西武の背中が見えない。3ゲーム差くらいになれば」と話していたが、差はついに3ゲームになった。

 「後半戦に弾みがつく。優勝経験のない若手が勝つ喜びを味わって、これをつなげてくれればいい」。執念でつかんだ交流戦初Vは、日本一奪回を目指す王ホークスにとって、これ以上ない追い風となった。【石田泰隆】