来年3月の第2回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の日本代表監督人事が再び混沌(こんとん)としてきた。第2回体制検討会議は27日に行われることが決定。だが、19日に報道されたマリナーズ・イチロー外野手(34)の発言が波紋を広げた。第1回会議で「現役監督は難しい」との意見が大勢を占め星野仙一氏(61)の監督就任が最有力となったが、コミッショナー特別顧問の王貞治氏(68)は20日「また違った意見が出るかもしれない」と議論が変化する可能性を示した。さらにヤクルト高田繁監督(63)は日本一監督の起用を提案する考えを披露。収束するかに見えた議論が、再びにわかに動きだした。

 楽天野村監督やマリナーズ・イチローの発言が、それぞれに重みを持って有識者たちを揺り動かした。王氏はこの日福岡市内で、イチローがWBC日本代表監督候補から現役監督を除外することに否定的な意見を述べたことに「『なるほどね』と思う」と理解を示した。王氏は「確かに現役選手が出てるんだから、現役監督うんぬんというのはまともな話ですよね」とも話した。27日に行われる第2回体制検討会議についても「イチロー君の発言で、また違った意見が出るかもしれない」と議論の再燃も示唆した。

 王氏は同時に、15日の第1回体制検討会議で自身は北京五輪代表監督の星野仙一氏を候補に挙げたことも明らかにした。同会議に出席した楽天野村監督が「王が『現役監督は難しい。星野がやるのがいいのではないか』と言っていた」と公にしたことを受け、王氏は「戦い慣れて、反省点もあるという面から、そういう話はしました」と認めた。その上で「(監督は)誰がやっても100人が100人全部OKということにはならないでしょう。なるべく早く決めたい。27日の(会議の)結論を待ちましょう」とも話した。

 高田監督のスタンスも変化してきた。第1回の会議後は「今ユニホームを着ていない人が理想」と話したが、この日は「日本一のチームの監督がやるのがいいと思っている」と次回の会議で提案する意向を示した。日本一監督を日本代表監督とする案は、9月1日の実行委員会でも提示されたが「(シリーズ後に決めるのでは)時間がない」との理由で見送られている。だが結局、監督が決まらないまま2カ月近くが経過。第2回の会議が日本シリーズの開幕間近になったとあっては、日本一監督案が再浮上するのも無理のないことだった。

 会議を招集する日本プロ野球組織(NPB)の加藤良三コミッショナー(67)はこの日、27日の第2回会議で監督が決定するかについて「展開の仕方によるでしょう。月末までには決めないと」と不透明であることを強調した。イチロー発言、そして楽天野村監督が「出来レースじゃないの」と評したことに反応し、会議を取り巻く空気は微妙に変化してきた。【大塚仁】