<横浜1-2阪神>◇9日◇横浜
振ればヒットになるのが阪神マット・マートン外野手(30)のバットだ。「打出の小づち」を持つ男が、猛虎の歴史に偉業を刻んだ。桧山が持つ28試合連続安打の球団記録に、V打で並んだ。4回2死三塁、投手のグラブをかすめる勝ち越しの中前適時打だ。日本記録まで、あと5試合。今日からの巨人3連戦でも、CSへの扉を開く安打を量産する。
ヒットメーカーの名を誇示するような戦慄(せんりつ)がマウンドを襲った。4回2死三塁。マートンの打球は小林寛の頭部に一直線。場内に悲鳴が上がる間もなく、右腕の右側頭部をかすめ、少し方向を変えながら中前に到達した。
図ったようにヒットを連ね続けて、ついに28試合。阪神歴代トップの01年桧山に並んだ。球界でも7位タイ。昨年、年間214安打の日本記録を樹立したマートンが2年目のシーズンでも勲章を手にした。
「今日はジェイソン(スタンリッジ)にはじまり、エノキダ、フクハラさん、キュージさんが1点を守ってくれた。今日はそれが一番だよ。どの打席でもいい結果を出したいと思っているけど、勝利に貢献できるのはうれしいね」
記念の一打は、記録よりも大きな意味を含むV打だった。1-1からの一撃で勝ち越しに成功。そのまま1点差で逃げ切った。掃除屋の役割を担って6番に座る助っ人が、期待通りに1本出した。
球場入りするとすぐ、ロッカールームで聖書を開いた。日曜日。教会に行けない代わり、練習前に読みふけって気持ちを新たにした。バッターボックスでは地面にバットで十字を切る。決勝打の打席は2球見逃して簡単に2ストライク。厳しい判定に一瞬しかめ面をしたが、時間をとって心を落ち着かせた。2球ファウルで粘ったあと、低めの142キロをジャスミートした。
続く6回の第3打席でも中越えに二塁打を放って2安打。日曜日は9試合連続で安打を放っており、曜日別で最多の32安打になった。日曜日に安打を打てなかったのは先発した24試合中、3回だけ。クリスチャンにとって特別な日に球団タイ記録をつくったのは、ある意味必然だった。
逆転CSの望みを信じて疑わない。メジャーでは今年、個人的に応援していたというブレーブスが約1カ月で8・5ゲーム差を逆転され、プレーオフ進出を逃した。「野球は何でも起こり得る。大逆転は何度も見てきた。最後にどの順位にいるかが大事だ」。
今日からは運命の巨人3連戦。球団新記録、そしてあと5試合に近づいたプロ野球記録へ。「阪神のユニホームを着て毎日プレーできるのは光栄なこと。これからもベストを尽くすだけ」。レコードブックの更新が、阪神に生き残りへの道をつないでいく。【柏原誠】



