<広島5-4巨人>◇16日◇マツダスタジアム

 でっかい初仕事だ!

 広島ドラフト2位の鈴木誠也内野手(19=二松学舎大付)が、プロ初安打を適時打で飾った。4回2死一、二塁から代打で登場。巨人先発今村の3球目スライダーを左前にはじき、先制点をたたき出した。ルーキーの活躍が、チームを勢いづかせ今季初の6連勝。CS(クライマックスシリーズ)進出のクリンチナンバーを10とし、悲願達成へのカウントダウンが始まった。

 新たな風を吹き込んだ。0-0の4回2死一、二塁。しびれる場面で代打に指名されたのは、19歳の鈴木誠だった。超満員のスタンドの歓声を浴びながら、ルーキーは頭の中で復習していた。前日15日は、7回1死満塁の好機に登場。だが、福田の前に全球スライダーで3球三振をくらった。「満塁で三振だった。力まずに思い切って振っていこう」と打席に向かった。

 自信を手にしたのは、2球目だった。今村のスライダーにバットが止まる。「昨日、初めて1軍の変化球を見て、ちょっと見える感覚があった」。2ボールから、3球目もスライダー。詰まりながらも左前に運んだ。プロ初安打が、先制適時打となり初打点もマーク。プロ3打席目での、メモリアル安打となった。

 “約束”があった。前日、荷物整理のため大野2軍寮に訪れると、リハビリ中の堂林に遭遇した。昨年の開幕戦でスタメンに抜てきされた先輩に「おれは3打席目だった」とプレッシャーをかけられた。同時に、アドバイスも授かった。「打ちたがり過ぎていると思う」。言葉の意味を吸収し、変化球を呼び込む一打で、先輩に追いついた。

 だが、記念の一打にも浮かれない。「ヒットを打つだけではダメ」と、二塁を欲張ってタッチアウトとなったことを猛省。19歳にして求めるレベルの高さが、非凡さを感じさせる。

 1軍の雰囲気を肌で感じたのも、打席ではない。試合を試合を退いた後の、ベンチだった。8回にキラの右前打が敵失を誘い勝ち越した、そのときだ。「点数が入って鳥肌が立ったんです。応援もすごくて、これが1軍かと思った」。いきなり、飛び込んだ舞台がCS争いの正念場。新星がさらにチームの勢いを加速させ、今季初の6連勝でCS進出までのクリンチナンバーを10とした。待ちに待った瞬間を、1年目にして味わえる「持ってる男」になるかもしれない。【鎌田真一郎】

 ◆鈴木誠也(すずき・せいや)1994年(平6)8月18日、東京都生まれ。小2から荒川リトルで野球を始める。中学時代は荒川シニア。二松学舎大付では1年秋からエースで、3年夏は東東京8強。投手としても最速148キロを誇ったが、高校通算43本塁打の打力を買われ野手として、12年ドラフト2位で入団。今季2軍で93試合に出場し、打率2割8分1厘、2本塁打、38打点。登場曲は名前にちなみ、アニメ「聖闘士星矢」のオープニング曲「ペガサス幻想」。家族は両親、妹。181センチ、82キロ。右投げ右打ち。