<コナミ日本シリーズ2013:楽天3-0巨人>◇第7戦◇3日◇Kスタ宮城

 悲願を果たした。楽天星野仙一監督(66)が自身4度目の日本シリーズ挑戦で、「永遠のライバル」と呼ぶ巨人を下し、日本一に輝いた。中日監督で2度、阪神監督で1度挑戦した頂に、ついに達した。先発の美馬が6回無失点と好投し、7回から則本、9回からエース田中を送り出し、迷いのない継投で東北にチャンピオンフラッグをもたらした。

 今年3回目の胴上げは、星野監督の予想を上回っていた。リーグ優勝、CS突破時の7度を超えた。「(回数は)覚えてないよ。腰、痛いわ」。冗談を言う顔は、うれしそうだった。球団創設からの年数を示す9度、仙台の夜空に舞った。

 腹をくくって、采配を振った。無失点の美馬を6回で代え、則本、そして9回は前日160球の田中。自ら「考えられないような継投だ」と言うタクトで、勝利をつかんだ。

 星野監督

 最高!

 東北の子どもたち、全国の子どもたちに、そして被災者のみなさんに、これだけ勇気を与えてくれた選手を褒めてやってください。

 王手をかけていた第6戦を落とした。試合後のミーティングで訴えた。「どうせなら、うれし涙を流させてくれ」。泣いても、笑っても、あと1試合。心中をストレートな言葉で伝え、暗い雰囲気を一変させた。

 「永遠のライバル」と呼ぶ巨人との決戦は、僅差が多かった。肉体的な負担は大きく、腰痛が再発。移動の東京駅で無口になるほどだった。仙台に戻った1日から連日、名人がいる治療院を訪れた。4度目の日本一挑戦。楽な相手がよかった、とは考えなかった。

 「強い巨人じゃなきゃ、つまらないじゃないか。巨人、巨人と意識するのも、俺が最後かもな。巨人は時に批判を受けることをしても、球界全体を考えている。他の11球団とは違う」

 45年前、ドラフト指名の約束をほごにされた。現役時の対戦では、ひときわ燃えた。阪神SD時代、監督就任を請われても、アンチ巨人を自任し断った。球界の盟主には強い敵でいてほしかった。「ある意味、ジャイアンツのおかげでここまで来られた。『何を!』と思わせてくれた」。打倒巨人には、野球人として大きくしてくれたことへの感謝も込められていた。

 悲願成就の裏で、数年先も考えていた。シリーズ出場資格40人枠の選定は信頼するコーチ陣に丸投げ。シリーズ開幕2日前のドラフト会議に専念した。1位、2位で高校生を指名。「(好きに指名できるなら)1位は社会人。譲っても大学生。でも1位の松井は即戦力になれる。2位の内田も、いずれ4番を打てる。そうなった時が面白いぞ。まあ、その頃、俺はおらんけど」。未来を語る顔も子供のように楽しそうだった。

 「結局、信念があるか、どうかなんだ。監督は、自分が辞めた後のことも考えないといけない。いくら勝っても、辞めた時にチームをボロボロにするようじゃ、名監督とは呼べない」

 信念の指揮を執った3年間。銀次、枡田、岡島ら積極的に使った若手が主力に成長した。ミスがあっても我慢を重ねたから。その末にライバルを倒し、初の日本一へと上り詰めた。尊敬する川上哲治氏と同じ「77」を背負う。「ジャイアンツじゃなかったらこんなにうれしく、涙が出るような思いにはならなかった。選手を誇りに思います」。本当に誇らしげに言った。【古川真弥】